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9条俳句判決 自由な議論の場を守る

 憲法9条について詠んだ俳句を公民館が月報に掲載しなかったのは、表現の自由の侵害か―。さいたま市の女性が起こした裁判で、東京高裁が市に賠償を命じる判決を出した。

 〈梅雨空に「九条守れ」の女性デモ〉。集団的自衛権の行使容認をめぐって議論が起きていた2014年。雨の中、反対の声を上げる女性たちを目にして詠んだ。

 地元公民館の句会で秀句に選ばれ、「公民館だより」に載るはずが、掲載を拒まれた。公平中立であるべき立場が損なわれるという理由だった。

 高裁判決は、原告の思想、信条を理由に不公正な取り扱いをしたと指摘。掲載しても公民館の中立性は損なわれず、拒否する正当な理由はないと断じた。

 一審は、表現の自由の侵害について判断せず、掲載拒否を人格的利益の侵害と結論づけていた。高裁も違憲判断はしなかったものの「思想、表現の自由は最大限尊重されるべきだ」と述べ、行政による介入の違法性を認めた。

 公民館は、地方自治の担い手であり主権者である市民が集い、学び、意見を交わす場だ。住民の自由な表現活動を支えることに本来の役割がある。

 作品の内容に踏み込んで掲載の可否を判断することは検閲にもなりかねない。公権力によって言論・表現の自由が不当に狭められることがあってはならない。

 市民の政治的な活動を公共の場から締め出す動きは相次ぐ。金沢では、市庁舎前広場での護憲集会を市が許可しなくなった。東京・あきる野市では、「戦争法案」の文言がある市民団体の会報を置くのを公民館が拒んだ。

 県内でも、池田町で一昨年、野党共闘を呼びかける集会を計画した町民有志らが、直前になって公民館の使用許可を取り消されている。町教委はその後、手続きの不備を謝罪したが、取り消した判断に誤りはなかったとする。

 集会を含む一切の表現の自由を保障する、と憲法は定める。民主主義の根幹として、言論・表現の自由はとりわけ重んじられなければならない人権だ。

 憲法、原発などをテーマにした催しへの後援を断る自治体も目立つようになった。政権批判につながることに関わって苦情や抗議にさらされるのを避けたい「事なかれ」や萎縮も見え隠れする。

 公の場での議論が妨げられれば民主主義の土台は揺らぐ。俳句裁判を、自治体の姿勢にあらためて目を向ける機会にしたい。

(5月19日)

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