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働き方法案 採決を急ぐ状況ではない

 看板政策に掲げた以上、是が非でも押し通すということか。

 6月20日の国会会期末をにらみ政府、与党は働き方改革関連法案を今週にも衆院で採決する考えだ。議論は不十分で、衆院を通過させる状況ではない。

 政府が最重要と位置付ける法案だ。安倍晋三首相は年頭記者会見で今国会を「働き方改革国会」と銘打っていた。審議入りした4月の衆院本会議では「1億総活躍社会を実現するための最大のチャレンジだ」と述べ、成立に全力を挙げる考えを示した。

 首相の意気込みとは裏腹に審議は入り口で足踏みしている。法案を作る上で根拠の一つとなった厚生労働省の労働時間調査で異常値が相次いで見つかったためだ。対象の事業所のうち、誤りや不合理なデータが確認された事業所は全体の2割に上った。

 政府は不適正なデータを削除して再集計した結果、「大きな傾向の変化はなかった」として調査自体は有効だと主張している。「前提が崩れた」とする野党との溝は埋まっていない。

 高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設について野党は法案からの削除を求めている。与党は日本維新の会の要望を取り入れ、一部修正する考えだ。強行採決との批判を避ける狙いだろう。

 法案は高プロに加え、罰則付きの残業時間の上限規制、正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」も柱だ。ともに重要な課題にもかかわらず、データ問題の陰に隠れてしまっている。

 残業は、最長でも月100時間未満、年720時間との上限を設けた。違反した企業には罰則がある。同一労働同一賃金は仕事内容が同じなら賃金や休暇などで同じ待遇の確保を義務付ける。企業は労働者の要求に応じ、格差について説明する義務も負う。

 一歩前進とはいえ、詰めるべき点がある。事実上、青天井だった残業を法律で規制する意義は大きいものの、労災認定の「過労死ライン」ぎりぎりでいいのか、吟味しなくてはならない。待遇格差については、不合理かどうかの線引きを明確にする必要がある。

 3本柱のどれを取っても議論は煮詰まっていない。野党6党派は与党側に法案作成のやり直しを求めることで一致している。そもそも規制の強化と緩和をひとくくりにした法案審議に無理がある。このまま成立を急いではならない。

(5月21日)

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