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G7議長総括 米国は重く受け止めよ

 米国は各国の「懸念と失望」を重く受け止めなければならない。

 先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議で、鉄鋼輸入制限など米国の保護主義的な政策に各国が反発して、対立が深まった。

 共同声明は出せず、議長国のカナダが米国以外の6カ国の総意として、議長総括を発表した。輸入制限が「開かれた貿易や世界経済の信頼性を損なう」と米国を非難する内容だ。会議後の公表文書で特定国を名指しするのは異例だ。

 米国は3月、日本などに対し、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す輸入制限を発動した。6月からは欧州連合(EU)やカナダ、メキシコにも適用を拡大している。自動車の輸入制限も検討中だ。

 問題とされたのは、米国が米通商拡大法232条の「安全保障上の脅威」を根拠に、一方的に輸入制限に踏み切ったことである。会議では、各国からは「貿易問題を安保上の問題とみなすのは不適切」などの意見が相次いだ。

 カナダとEUはすでに、米国を世界貿易機関(WTO)に提訴する準備を開始している。メキシコは報復関税を始め、カナダとEUも検討しているという。麻生太郎財務相もWTO提訴を検討すると明らかにしている。

 各国の反発に対し、トランプ米大統領は「貿易戦争に負けるわけにはいかない」とツイッターに投稿するなど聞く耳を持たない。

 6カ国と米国の対立は深刻だ。このままだと報復合戦が現実となり、世界の貿易量が減少して世界経済に悪影響を与える。米国も無関係ではいられまい。対話による解決が欠かせない。

 世界経済は課題が山積している。5月下旬にはイタリアの政局混迷に伴って市場が不安定化。今後の動向によってはさらなる混乱も懸念される。米国の利上げの影響で、世界経済をG7とともに牽引(けんいん)してきた新興国から投資マネーが離れ、悪影響も出始めている。

 G7は一致して、これらの問題に対応することが必要だ。

 8日からは、各国の首脳が直接協議するG7首脳会議(サミット)が始まる。対立を引きずり、首脳宣言を出せない状況になると解決は遠のく。市場にも動揺が広がりかねない。

 必要なのは米国が矛を収めることだ。輸入制限の負の影響を冷静に分析し、各国と協調して、戦後築いた自由貿易体制を守る意義を再確認してほしい。対立が続けばG7の存在意義が失われる。

(6月5日)

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