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所有者不明地 特別措置法をステップに

 所有者が不明になっている土地を有効利用するための特別措置法が成立した。

 知事の判断で最長10年間の使用権を設定して、公園や農産物の直売所など、公益性のある事業に使えるようにする内容だ。

 相続後の未登記など持ち主が分からなくなっている土地は、全国に約410万ヘクタールあるとされる。九州の面積を上回る規模だ。このまま対策をとらず放置すれば、人口減少や高齢化の進展などの影響で2040年には約720万ヘクタールに達するという推計もある。

 これらの土地は荒廃して治安や景観の悪化を招いたり、公共事業や災害復旧の支障になったりする。東日本大震災の復旧工事では、防潮堤の建設予定地に明治時代に登記されたままの土地が見つかり、600人以上の相続人に文書を送ったケースもあった。対策は急務である。

 特措法は、事業を計画する市町村や企業、NPOなどが知事に土地利用を申請し、公益性が高いと認められれば使用権を設定する仕組みだ。

 放置された土地の利用に一定の道を開くだろう。ただし、問題も残されている。

 所有者が判明し、明け渡しを求めた場合は、設定期間が終了した後に更地にして返還する必要がある。そのため、公共事業など長期的な利用計画は立てにくい。有効利用を優先して、土地の所有者捜しがおろそかになる懸念もある。慎重な対応が求められる。

 今回の特措法は、問題の抜本対策ではない。所有者不明土地の増加を防ぐ手だてが必要だ。

 現在は、相続した不動産の登記をするかどうかは所有者に任されている。地方を中心に地価が下がり、手続きにも費用や手間がかかるため、登記されない土地が増加しているとされる。

 政府は今月、対策の基本方針を公表した。登記の義務化と、売却や活用に困る土地所有者が所有権を放棄できる制度の検討が柱だ。一定期間管理されていない土地は所有権が手放されたと判断する「みなし放棄制度」も検討する。20年までに必要な法改正を目指すという。

 義務化は所有者の負担になる可能性がある。登記手続きの簡素化や費用の低減も合わせて議論する必要があるだろう。

 問題は「みなし放棄制度」だ。所有権を国が一方的に奪うことにつながる。どの程度管理されていなければ放棄とみなすのか、慎重な検討が求められる。

(6月7日)

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