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よろいに突き刺さった無数の矢の羽根は秋風に吹かれてなびくススキの穂のようだったという。「義経記」に描かれた武蔵坊弁慶の最期はすさまじい。主君源義経を守るため奮戦し立ったまま息絶えた

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豪傑をうたわれ義経の腹心の臣だった。奥州に逃れた義経は源頼朝の追っ手500騎に追い詰められる。残ったわずか8人の軍勢も次々討ち死にする。弁慶は「法華経を読み終えたい」という主君の願いをかなえる時間を稼ぐため自ら盾になるのだった

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後世の人たちが多分に脚色した英雄である。3月、その弁慶を甘利明元経済再生担当相が引き合いに出して発言した。「麻生太郎副総理兼財務相には義経を支える弁慶として力の限りを尽くし(安倍晋三首相を)支えてもらいたい」。顧問を務める自民党麻生派の会合でのことだ

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森友問題で公文書改ざんなど信じ難い不正に手を染めた財務省。政治責任を負うべき大臣が批判の矢面に立つのは当然だ。麻生氏は矢を一身に受けているのか、巧みにかわしているのか。内部調査を受け自らに放ったこの矢は痛くもかゆくもないだろう

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閣僚給与1年分(170万円)の自主返納という処分である。家族分を含め総資産5億2千万円、年間所得4千万円余に比べれば軽さが際立つ。首相を守ろうと弁慶気分で辞任しないならおこがましい。それとも首相と一蓮托生(いちれんたくしょう)、と腹をくくっているのか。

 ◇訂正 6日付で「晴天」は「青天」でした。

(6月7日)

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