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社会保障改革 削る議論ばかりでは

 増大する社会保障費にどう対処するのか。展望は開けぬままだ。

 「高齢化による増加分に相当する伸びに収める」。政府は、経済財政運営の骨太方針案に、社会保障費抑制の目標を掲げた。具体的な数値こそ見送ったものの、相変わらず医療や介護の給付費をいかに抑えるかという「出」の議論に偏っている。

 国民に負担を求めるのなら、公平な税制のあり方も同時に探らなくてはならない。

 方針案には、医療・介護費の自己負担が3割となる高齢者を増やす、介護サービスの利用に伴うケアプラン作成を有料にする、などの検討事項が挙がった。

 財務省の財政制度等審議会は▽75歳以上の医療費窓口負担を段階的に2割に引き上げる▽医療費総額の増加に応じて患者の自己負担率を自動的に上げる仕組みを導入する▽介護サービスの利用者負担を原則1割から2割に上げる―などを提案していた。

 政府の経済財政諮問会議も、社会保障費の一層の圧縮を主張している。もっと負担を、削減を、との掛け声ばかりが響く。

 団塊の世代全員が75歳以上となる2025年度に社会保障費は140兆円を超え、高齢者数が最多に近づく40年度には190兆円に膨らむ見通しだ。確かに、サービス利用者の一定の負担増は避けられそうにない。

 ただ、政府は16〜18年度で、給付費の増加を計1兆6千億円ほどに抑え込んだ。低年金で暮らす高齢者らに必要なサービスが行き渡らない事態が生じている。財源となる税制の見直しを欠いていたのでは、いずれ行き詰まる。

 超高齢社会を見据え、経団連や経済同友会は、消費税を10%からさらに引き上げるよう提言している。社会保障の財源を考える際、なぜ逆進性の高い消費税だけに矛先が向くのだろう。

 所得税の累進性や、個人と法人の資産課税を強化すべきとの指摘がある。国際間競争を理由に引き下げが進む法人税にしても、既にさまざまな軽減措置が講じられており、必要性に疑問が残る。

 サービスを削り、利用者の負担を増やして給付費を抑える―。いまの論議の方向性では、お金を持つ人と持たない人、健康な人と闘病や介護が不可欠な人との間で格差が広がるばかりだ。

 安心して望むサービスを受けられなければ、何のために高い社会保険料を払っているのかという不信を強める。社会保障制度の土台が揺らぎかねない。

(6月7日)

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