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女児虐待死 惨劇の連鎖を絶ちたい

 5歳の女児は独り、どんな気持ちで親への謝罪の言葉をつづったのだろう。

 東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃんが衰弱死した事件で、継父と実母が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。

 未然に防げなかったのか。子どもの虐待死が報じられるたびにやりきれなくなる。児童相談所(児相)職員の不足、関係機関の連携の不備…。虐待への対応を巡る課題が改めて浮かぶ。

 結愛ちゃんが亡くなったのは3月だった。食べ物もろくに与えられず家に閉じ込められ、日常的に暴行を受けていたとされる。継父自身が通報し、傷害容疑で逮捕、起訴されている。

 最悪の結果を回避する機会はあったろう。

 1月に目黒に転居するまで住んでいた香川県では、口から血を流して放置されているのが見つかり児相は2度、結愛ちゃんを一時保護した。警察も2回、継父を傷害容疑で書類送検していた。

 東京都の品川児相も自宅を訪ねたが、母親に拒絶され結愛ちゃんには会えなかったという。入学予定の小学校の説明会に来なかったことも把握していた。

 両児相の間で危険性が共有されていたのか疑わしい。けれど、児相だけを責められない。

 2016年度の児童虐待件数は12万超に上った。15年前の5倍に増えているのに、保護者や子どもに接する児童福祉司の数は約3千人にとどまっている。

 政府も問題を重視し、家庭裁判所による関与の強化、強制的に家庭に立ち入る「臨検」手続きの簡略化、市町村ごとの支援拠点整備といった対策を講じている。

 ただ、肝心の人手が不足しては継続的な支援は難しく、効果は限られてしまう。

 児童福祉司を対象にした調査では、業務の負担が「大きい」との回答が94%を占めた。現場からは「機能強化で職員が疲れ切っている」との声が上がる。

 愛知県のように、警察と協定を結び、虐待事案の情報を定期的に提供している県もある。司法や捜査機関の介入には慎重さが求められるものの、このまま児相任せにできないのは確かだ。まずは市区町村との役割分担を図り、民間団体との協力も密にしたい。

 虐待増加の原因として、保護者の孤立、家計の悪化が指摘されている。社会のあり方そのものに関わってくる。対症療法的な仕組みだけでは解決できないことを、国は忘れないでもらいたい。

(6月8日)

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