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子どもの泣き声を不審に思い、香川県善通寺市の住民が児童相談所に通報したのは2年前の8月。泣き声は船戸結愛(ゆあ)ちゃんのSOSだった。継父の虐待に相談所や警察がたびたび介入したのに、なぜ命を救えなかったか。痛恨事である

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やせ衰え泣き叫ぶ力も失ったのだろう。継父に命じられ午前4時に起き、平仮名の書き取り練習をする毎日。ノートに両親に許しを請う言葉を書き残すほかなかった。自分が変われば優しさを取り戻せる、と5歳ながらに考えたのか。ふびんでならない

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遊びに夢中になる年頃の子が〈あそぶってあほみたいだからやめるから もうぜったいぜったいやらないからね〉と誓っている。「しつけ」と称し服従を強いていた継父、「自分の立場が危うくなる」と虐待を見過ごしていた実母。ドアを閉ざした再婚家族に何が起きていたのか

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昨年夏公開の日本映画「幼な子われらに生まれ」は子連れ再婚の一家を描き家族の在り方を問い掛けている。夫婦とも再婚か、どちらかが再婚の婚姻は全体の27%に上る(2016年人口動態統計)。血のつながらない親と子がどう向き合うかは切実だ

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再婚家族の調査や支援に取り組むNPO法人理事長新川てるえさんは著書で指摘する。子どもたちは親の決めたことに黙って従うだけのつらい立場にいる、と。家族の多くは困難を乗り越えようとしている。その悩みに耳を澄まし分かち合える社会でありたい。悲劇を繰り返さぬためにも。

(6月8日)

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