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拉致問題 独自対話へ力を尽くせ

 安倍晋三首相がトランプ米大統領とワシントンで会談した。12日に行われる米朝首脳会談で日本人拉致問題を取り上げることを改めて確認している。

 首相も述べているように、最終的には日本が解決していく問題である。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談実現に全力を挙げなければならない。

 トランプ氏は拉致問題を必ず提起すると明言し、首相は共同記者会見で「約束してもらったことをうれしく思う」と述べた。

 「早期解決のため北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい」と日朝会談への意欲を示している。2002年の日朝平壌宣言に基づき国交を正常化し、経済協力をする用意があることも表明した。

 首相は米国への出発前、記者団に「核・ミサイル、何よりも大切な拉致問題が前進するよう、トランプ氏と擦り合わせ、米朝首脳会談を成功させたい」と強調していた。拉致問題の提起を重ねて要請することが訪米の眼目だった。ひとまず目的は達した形だ。

 政府は北京の大使館ルートなどさまざまな手段で北朝鮮とやりとりをしているという。しかし、首脳会談への道筋は見えない。北朝鮮が対話攻勢をかける中、米国に頼らざるを得ない日本の苦しい立場を改めて痛感する。

 トランプ氏の確約を得たとはいえ、どのように取り上げられるのかは分からない。非核化交渉の進み方によっては、北朝鮮の態度を硬化させかねない人権問題は二の次になる心配がある。

 首相は会見で「最終的には私と金委員長で直接協議し、解決していく決意だ」と述べた。「問題解決に資する形で日朝首脳会談が実現すれば良い」との認識も明らかにしている。

 かねて「対話のための対話には意味がない」と主張してきた。北朝鮮に対して圧力一辺倒の姿勢を続けてきた結果、情勢の変化に取り残されかねない状況を生んでいる。対話なしに問題解決への展望を開くことはできない。方向を転じるのは当然である。

 北朝鮮は拉致問題について「解決済み」との立場を崩していないとされる。隔たりを埋めるのは容易でない。

 拉致から長い年月がたち、被害者家族は高齢化している。「最後のチャンス」との思いは強い。第2次政権発足以降、首相は最重要課題に掲げてきた。家族の切実な願いに応える責任が重い。関係国との連携を強めるとともに、独自交渉へ手段を尽くす時だ。

(6月9日)

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