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近世の日本は男子が15歳、女子は13歳がおおむね大人の仲間入りをする「成人年齢」だった。農村社会では「若者組」に入り祭礼や婚礼など村の仕事も学ぶ。労働力や共同体の一員として、17〜18歳ごろに「一人前」のお墨付きを得た

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近代に入ると「一人前」の基準が上がる。1873(明治6)年の徴兵令は20歳以上の男子を対象とした。徴兵検査で「甲種合格」なら一人前との風潮が広がる。国にとって有用かが最優先される線引きだ。山形大准教授安藤耕己さんの論文に教わった

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76年の太政官布告は20歳を成人年齢と定めた。96年に制定された民法も同じ。法務省資料によれば、当時の欧米では21〜25歳が主流だった。起草した法学者の梅謙次郎は「日本人の寿命が短い」「世間的な知識の発達がすこぶる早い」と説明した。分かるようで分からない理由だ

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およそ140年ぶりの変更である。18歳に引き下げる改正民法が国会で成立した。けれど今なぜ必要か政府から明確な説明はない。若者の社会参加などの期待は強くても国民に理解が広がっていない。世論調査で7割が反対しているという数字が物語る

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「社会の成熟度と個人の成熟度は反比例する」と精神科医斎藤環さんはいう。「一人前」に育つのが難しい社会である。権利と責任を負わせるなら高校教育を変える必要がある。政治や消費活動のルールを自ら学べる機会がないと、安藤さんが指摘する「みせかけの参政」になりかねない。

(6月14日)

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