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森林バンク法 実効性が見えてこない

 放置された私有林を所有者に代わって市町村が管理する「森林バンク」制度を盛り込んだ森林経営管理法が、今国会で成立した。

 木材価格の低迷などを背景に所有者の森林への関心が遠のき、手入れがされていないスギやヒノキの人工林は多い。相続の手続きをせず所有者が分からなくなったところも珍しくない。

 こうした人工林を市町村の管理下に集め、意欲のある林業経営者に整備を委ねる制度である。収益が望めない森林は市町村が管理を続けることも想定している。

 同法は、森林の適切な管理は所有者の責務だと明確化。その上で、後継者不在などで困難な場合に、市町村に伐採や植林の権利「経営管理権」を設定するとした。林野庁は、設定が必要な人工林は400万ヘクタールを超えると見込む。

 人工林は放置すると土砂崩れの原因になりかねない。植林から50年以上がたち、伐採期を迎えている木が多い。効率的な整備には所有が細かく分かれた森林をまとめなければならない。

 新制度の方向性は理解できる。問題は、想定していることが実際に進むかである。

 財源は、2024年度から個人住民税に年間千円を上乗せする新税「森林環境税」を充てる予定だ。それまでは借金で賄う。国民に新たな負担を求めることになる。理解を得るには見通しや目標を分かりやすく示す必要がある。

 運営態勢が市町村の現場に整っていない課題がある。林務専従の職員を置いていない市町村は多い。専門知識のある人をアドバイザーとして雇用する制度が昨年度から始まったが、広がりに欠ける。専門人材が不足している。整備を委託できる林業経営者の数が不十分との指摘もある。

 市町村への移管をどう促すかも課題だ。所有者の同意を得て整備する取り組みは、長野県の森林づくり県民税(森林税)の事業でも力を入れてきた。所有者の不明や不在、境界が不明確であることなどがハードルとなり、予算を消化しきれない状態が続いてきた。

 新制度では、公告など一定の手続きを経ることで所有者不明の私有林を市町村に移管できるようにした。ただ、所有権を大幅に制限する対応には、市町村が慎重になることも予想される。

 森林整備が目的の税制は、長野県を含む37府県が地方税で独自に導入済みである。二重課税になるとの見方もある。新税導入に当たっては、必要性や役割分担をはっきりさせなければならない。

(6月16日)

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