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大学改革 自由と多様性を損ねる

 中央教育審議会の部会が、大学の将来像をめぐる議論の中間まとめを示した。再編を促す具体策として、複数の国立大を一つの法人の傘下に置く「アンブレラ方式」や、国公私大の枠組みを超えて複数の大学を統括する法人を設け、連携を進める仕組みを挙げている。

 少子化に伴い、18歳人口は今後、大幅に減る見込みだ。社会のあり方も大きく変化している。大学の再編、改革は避けて通れない課題である。とはいえ、政府がお仕着せで進めれば、大学の自治を損ない、学問の場から自由と多様性がさらに失われていく。

 中間まとめは同時に、各大学が「養成する人材」を明確化するよう求めている。そのための「三つの観点」として、「世界を牽引(けんいん)する人材」「高度な教養と専門性を備えた人材」「高い実務能力を備えた人材」を示した。

 産業界の役に立つ人材を育てない大学は要らないと言わんばかりである。けれども、大学の存在意義は産業界の要請に応えることだけにあるのではない。大学側が、類型的な枠に押し込められると反発するのはもっともだ。

 大学改革は、産業競争力を強化する成長戦略と位置づけられ、経済界や政権の意向を色濃く反映して進められている。中間まとめが、実務家教員の配置や理事への外部人材の任用を大学に求めているのもその表れだ。

 将来像の議論は、首相官邸が主導する「教育再生実行会議」の提言などが土台にある。教育施策の大枠を官邸主導で決め、中教審はそれを具体化するだけ―。安倍政権下で顕著になった傾向は、小中学校での道徳の教科化の経緯にも見て取れる。政治権力の介入に歯止めがかからず、教育の独立が根元から揺らぎかねない。

 国立大は既に、「地域に貢献」「全国的な教育研究」「世界で卓越した教育研究」の3分類で取り組みが評価され、国からの運営費交付金が傾斜配分される仕組みになっている。文部科学省は、高等教育の「無償化」をめぐっても、実務経験がある教員の配置などを条件とする方針だ。

 大学のあり方を見定め、どう改革していくかは、本来、大学や教員が主体となって取り組むべきことだ。教育行政の役割は、それを下支えすることにある。

 あべこべに大学のあり方に枠をはめ、選別するかのやり方は、学問、教育の統制に結びつく。政府が進める大学改革の根本を問い直さなくてはならない。

(7月2日)

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