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対イラン関係 米国に従うだけなのか

 政府内で浮上していた今月中旬の安倍晋三首相のイラン訪問が見送りになった。

 核合意を離脱し、イランへの締め付けを強めるトランプ米大統領に配慮せざるを得ないと判断したという。米政権の顔色をうかがうばかりでは、首相の掲げる「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」の看板はますます色あせる。

 欧州・中東歴訪に合わせて首都テヘランでロウハニ大統領と会談するスケジュールを想定し、調整していた。イランと意思疎通を図ることで日本の独自外交を印象付けようという狙いだった。

 米国の同意を得られなかったのだろう。関係者によると、実現困難との考えを6月下旬までにイラン側に伝えた。今回の中東歴訪はサウジアラビアとエジプトの2カ国になる。イラン訪問は、米国との関係がどう推移するかを見極めた上で改めて機会を探る。

 米国など6カ国とイランとの2015年の核合意は、イランが核開発制限を受け入れる代わりに欧米が制裁を解除する内容だ。米政権は今年5月、一方的に離脱を表明した。首相の訪問は、核合意を引き続き支持する日本の立場を伝える機会になるはずだった。

 米国による制裁再発動の表明を受け、イラン経済は外国企業の撤退など苦境が深まっている。通貨下落や物価上昇が記録的水準となり、国民生活にしわ寄せが及んでいる。不安や反発を背景に反米の保守強硬派が勢いづけば、情勢がさらに緊迫しかねない。

 トランプ政権は日本を含む各国に対し、イラン産原油の輸入を11月4日までにゼロにするよう求めている。ここでも日本政府の対応は苦しい。「エネルギー事情に照らして応じ難い」と反論しているものの、協議は平行線だ。

 各国への禁輸要求を巡り、米国務省高官は日本について「米国との関係を重視しており、協力は得られるだろう」と述べていた。米国一辺倒の日本の外交姿勢を見透かしたかの発言である。

 北朝鮮の非核化、拉致問題解決に向けて米国との緊密な連携は重要だ。だからといって、核合意離脱、制裁再発動を巡っても米国に気を使うようでは、中東外交の積み上げを損ないかねない。

 核合意の崩壊阻止へ、欧州は米国の制裁から企業を保護する方策を検討している。ロウハニ大統領は欧州を歴訪し、米国抜きの核合意維持の可能性を探っている。

 日本は欧州とも協力し、引き続きトランプ氏に再考を促していくべきである。

(7月5日)

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