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文科幹部収賄 背後にある構造、解明を

 文部科学省の現役幹部が私立大の支援事業で便宜を図る見返りに息子を裏口入学させたとして、受託収賄の疑いで逮捕された。今どきこんなことがと、にわかには信じ難い事件である。

 佐野太容疑者は、官房長だった昨年、東京医科大の関係者から便宜供与の依頼を受け、代わりに今春受験した息子の点数を水増ししてもらったという。金銭の授受はないが、東京地検特捜部は、賄賂にあたる「不正な利益」を得たと判断した。

 官房長は人事や予算について省内の調整を担い、幅広い権限を持つ役職だ。事実なら、行政権限の私物化と言うほかない。組織的な天下り問題などで揺らいだ教育行政への信頼は失墜する。

 便宜を図ったとされる「私立大学研究ブランディング事業」は、大学の看板になる研究に国が助成する。昨年度は188校の応募があり、東京医科大を含む60校が対象に選ばれた。

 各大学が提出した計画書を基に学識経験者が選定にあたる。東京医科大は前年度、ほぼ同じ内容の計画書を出して落選していた。官房長の意向はどう働き、どこに恣意(しい)的な選定の余地があったのか。徹底して検証する必要がある。

 少子化による18歳人口の減少で私大の経営は厳しさを増している。既に4割は定員割れしている状況だ。一方で文科省は、私大への助成を一律の配分から経営改革の取り組みや業績に応じて配分する仕組みに改めてきた。

 競争して獲得する「特別補助」の割合が増し、各大学がしのぎを削っている。今回の事業も特別補助の一つだ。学部を新設、再編する動きも活発化し、設置認可や補助金配分の権限を持つ文科省は、大学に対してより強い影響力を持つようになっている。

 昨年発覚した天下り問題は、文科省と大学が癒着する構造を浮き彫りにした。違法とされた再就職先の多くが大学だった。文科省と結びつきを強めて経営の安定を図ろうとする大学側の姿勢が、再就職先を確保したい文科省の思惑と絡んで、なれ合いを生んだ。

 今回の事件でも、東京医科大の理事長、学長が便宜供与の依頼や入試の不正に関与した疑いが浮上している。佐野容疑者は事務次官候補とも目されていた。

 事件は、文科省と私大の不透明、不明朗な関係の表れではないか。構造的な面に目を向け、点検し直すことが欠かせない。それなしに信頼回復はおぼつかないことを文科省は認識すべきだ。

(7月6日)

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