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大飯控訴審 司法の後退は許されない

 主体的に判断しないということなのか。

 福井県の関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを巡る控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は、差し止めを認めた福井地裁の判決を取り消し、住民側の請求を退けた。

 原子力規制委員会の新規制基準に不合理な面はないとし、稼働の安全性を認めている。

 いまの原子力行政の仕組みを肯定しすぎた感が否めない。

 原発の新規制基準について、裁判長は「専門家が参加し、最新の科学的・技術的知見を反映し制定された」と評価。規制委の審査も合理的で、危険性は無視できると結論付けている。

 基準は設備面の適合性を見る指針にすぎない。規制委も「安全の保証ではない」と認めている。政府は「世界最高水準」と繰り返すけれど、原子炉や原子炉建屋の構造強化が不十分なことは、多くの専門家が指摘している。

 何より、住民の避難計画が規制委の審査対象に含まれていない。16万もの人々が故郷を追われた福島の現実があるのに、判決は住民避難に触れなかった。

 重大な事故に対処できるよう管理・統制されていれば「原発に内在的な危険があるからといって、人格権を侵害するとはいえない」と断じている。

 控訴審では、耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」の妥当性が焦点になった。規制委の元委員長代理が、基準地震動が過小評価された可能性を指摘し「想定に大変な欠陥がある」と証言したものの、考慮されなかった。

 裁判長も重視した争点なのに、住民側が行った地震学者らの証人申請を却下している。訴訟指揮にも疑問が残る。

 原発の廃止は「大いに可能」としながら、判断を立法府や行政府に委ねた点も見過ごせない。

 3・11後、最高裁は「原発訴訟特別研究会」を設けた。全国から集まった裁判官からは、行政手続きの適否にとどまってきた従来の判断の枠組みを見直すべきだ、との意見が聞かれた。

 その後、福井地裁、大津地裁、広島高裁は、地震や津波、火山対策を独自に見極め、運転差し止めを認める判決、仮処分決定を出してきた。再び主体的な判断を避けるようになっては、司法の後退と言わざるを得ない。

 憲法に記されている通り、それぞれの裁判官が独立した職権を行使し、厳密な検討を重ねていけば原発がはらむ不合理は、より明確になっていくはずだ。

(7月6日)

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