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「区切り」は心の大事な営みだ。一区切り付けば次への意欲もわいてくる。オウム真理教事件できのう元教祖の松本智津夫死刑囚らに刑が執行された。県内も巻き込まれた犯罪史上類のないテロである。被害者の思いはどうだったろう

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「いろいろな人がこの日を待っていた。一つの区切りだと思う」。地下鉄サリンで夫を亡くした妻は話した。「事件に遭わなければ別の人生があった。区切りは付かない」。出勤途中に重い障害を負った妹を介護する兄は、この先も続く事件だと語った

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共通するのは、むなしさや無念の思いだろうか。松本サリンで妻を亡くした河野義行さんの「事件の真実に迫ることができなくなって本当に残念」とのコメントが代表している。絶対的存在として君臨した教祖は指示をした責任を弟子に押しつけ、法廷で口を閉ざしたままだった

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事件を追ったジャーナリスト江川紹子さんは、教祖への愛着や恐怖と、事件への後悔や責任感との間で揺れながら証言する元信者の姿に、心を動かされたこともあった。なぜ普通の若者が組織犯罪に走ったのか一端は解き明かされたと本紙で述べている

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江川さんらは膨大な裁判記録を永久に保管するよう法相に求めている。事件の風化は避けられないだろうが、再発防止の教訓をくみ取る資料研究に区切りはない。真面目な若者がはまった狂信的な宗教集団のわな。課題は事件を知らない世代に誰でも加害者になり得ると伝えていくことだ。

(7月7日)

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