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松本サリン解明は 遺族らにやり切れぬ思い

 「死刑が執行されても区切りにはならない」―。オウム真理教の松本智津夫死刑囚(63)ら教団元幹部らの死刑が執行された6日、24年余前に起きた松本サリン事件の遺族らは、やり切れない思いを口にした。松本死刑囚は事件の背景などについて最期まで語ることはなかった。関係者は、教団が犯罪集団と化した経緯を検証し、教訓をくみ取る必要性を改めて指摘している。

 松本サリン事件で、会社員だった次男豊さん=当時(23)=を亡くした小林房枝さん(76)は6日午後、静岡県掛川市の自宅で取材に応じた。仏壇には、豊さんが亡くなる2、3カ月前に撮影した遺影。毎日、ご飯を供えながら向き合っている。

 豊さんと過ごした時間より、失ってからの時間の方が長くなった。「死刑が執行されても区切りにはならない」と小林さん。豊さんのことを思い出すと「生きていけない」と考えてしまう。松本の現場には、もう足を運ばないつもりだという。

 事件発生時は信大1年生で、3人が死亡したアパートで被害に遭った会社役員男性(43)は、松本死刑囚と新実智光死刑囚の公判で被害者として意見陳述した。松本死刑囚の表情には感情が見られず「怒りが湧いた」一方、新実死刑囚は笑みを浮かべており、「ぞっとした」。サリンを吸い、一命は取り留めたものの不整脈などの後遺症がある男性。「執行は当然で、良かったという気持ち」とした。

 被害者や遺族に釈然としない思いを抱かせた松本サリン事件は、オウム真理教松本支部道場(松本市)の明け渡し訴訟の妨害が動機の一つだったとされる。訴訟で原告代理人を務めた山内道生弁護士(71)は6日、松本市役所内で記者会見し、「一連の事件は日本中を震撼(しんかん)させた。死刑執行は当然の結果」と強調。一方で、「事件の全体像、真相の解明は不十分」とし、事件の検証や国レベルでの再発防止対策を進めるべきだと訴えた。

 死刑執行を巡っては、松本サリン事件の第一通報者の河野義行さん(68)も「これで、事件の真実に迫ることができなくなった」と発言している。事件当時、信大病院の救急部副部長として被害者の治療に当たった富山大医学部(富山市)教授奥寺敬さん(62)は、「これほど多くの死刑が一斉に執行されるのは前例がない。事件の異常性を感じる」と指摘。「医学の知識が悪用された。倫理面からもしっかりと事件を分析し、教訓をくみ取る必要がある。刑の執行で事件が終わったと考えてはいけない」とした。

(7月7日)

長野県のニュース(7月7日)