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米中貿易戦争 妥協点を見いだす責任

 米中貿易戦争が本格化した。このままでは世界経済への深刻な影響が避けられない。

 トランプ米政権が、知的財産の侵害を理由にした中国への大規模な高関税措置を発動した。対抗して中国が報復関税措置の発動に踏み切るという事態である。

 米国は中国からの輸入品計500億ドル分(約5・5兆円)に25%の関税を上乗せする方針で、340億ドル分を先行実施した。ハイテク製品など中国が力を入れている分野が対象だ。一方、中国は米国の大豆や牛肉、自動車を対象に同規模の関税を課した。

 打撃を受けるのは米中の産業や消費者に限らない。両国には多くの国の企業が現地工場を構える。生産と販売のネットワークを通じ、影響は世界に波及する。

 制裁と報復の連鎖を止めねばならない。米中は世界首位と2位の経済大国として世界経済に及ぼす悪影響を自覚し、交渉によって妥協点を見いだす責任がある。

 摩擦は3月から激化した。5月からの協議では、中国が米国の農産物を大量輸入するなど貿易不均衡を是正する譲歩案を提示し、歩み寄りも見られた。米国が中国のハイテク産業への補助金などを問題視し、交渉は決裂した。

 米国の強硬姿勢の背後には、中国が掲げる「中国製造2025」への警戒心がある。ハイテク産業の成長を目指す国家戦略だ。

 米国は、米企業が中国で現地企業と合弁事業をする際に先端技術の中国側への移転を強いられていることなどを強く批判。米中摩擦は、将来の産業構造を見据えた覇権争いの様相も示している。

 中国の知的財産権侵害は日本や欧州各国も問題視している。本来なら連携して対応すべき問題である。だが「米国第1」を掲げるトランプ氏は日欧にも一方的な制裁に踏み切った。影響の大きい自動車の輸入制限も検討中だ。

 保護主義の負の側面は既に米国内で表面化している。米オートバイ大手ハーレーダビッドソンは米国内の生産の一部を国外に移すと発表した。欧州連合が対抗措置として決めた輸入制限を受けた経営判断だ。保護主義が国内雇用の維持につながらないことを示す。

 中国の対抗措置で影響を受ける米国の大豆農家からは不安の声が聞かれる。米国商業会議所も制裁関税への反対運動を始めた。

 中国は不透明な通商政策を改めるべきだ。米政権に対しては、相互依存の強まった世界経済の現実を直視するよう各国が対話を促していく必要がある。

(7月8日)

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