長野県のニュース

共謀罪法1年 厳しい目、向け続けねば

 共謀罪法(改正組織犯罪処罰法)が施行されて1年が過ぎた。内心の処罰につながり、民主主義の土台を揺るがす危険性をはらんだ法である。時間とともに社会の関心が薄れていないか、気がかりだ。

 広範な犯罪について、計画に合意しただけで処罰できるようにした。実行行為を罰する刑法の基本原則は覆され、刑罰の枠組みそのものが押し広げられた。

 合意という意思を罰することは内心の自由や表現の自由を侵し、人権と尊厳の根幹を損なう。その危うさは、思想・言論が弾圧された戦時下の治安立法に通じる。

 共謀罪が適用された事例はまだない。強い批判を押し切って成立させただけに慎重に対応せざるを得なかった状況がうかがえる。

 ただ、捜査当局による運用実態を把握する仕組みはない。恣意(しい)的な運用の歯止めもないに等しい。社会が厳しい目を向け、縛りをかけていくことが欠かせない。

 「東京五輪に向けたテロ対策のため」「一般の人が対象になることはあり得ない」…。法案審議での政府の答弁は、論拠を欠くごまかしが目についた。

 法にテロ対策の実体はない。テロを条文で定義してさえいない。そもそも、テロ対策に不備があるなら個別の立法で対応すべきである。270余もの犯罪に共謀罪をいちどきに設ける乱暴な立法の理由にはならない。

 適用対象となる「組織的犯罪集団」とは何か。何をもって計画に合意したと見なすのか。肝心な点はいずれも曖昧で、捜査当局による判断の余地は広い。

 市民団体や労組も「目的が一変」すれば組織的犯罪集団とみなされる。構成員のほか「関わりのある周辺者」も対象になる。射程はいくらでも広がり、市民運動を抑え込む武器になり得る。

 また、共謀を察知するには、監視や秘密裏の情報収集が欠かせない。協力者を送り込んで内情を探らせるといった公安警察的な活動がさらに広がる恐れがある。

 政府の情報を広く秘匿する特定秘密保護法の制定は、違反を取り締まる警察の権限を強めた。通信傍受法の改定で、電話などの傍受(盗聴)が市民の活動や生活に広く及びかねない状況にもなっている。共謀罪法によって監視国家化が一段と進む懸念は強い。

 廃止を見据えつつ、人権の侵害や抑圧につながらないよう運用を見張り、声を上げていくしかない。警戒を怠れば、市民の自由は狭められ、社会は窒息していく。

(7月11日)

最近の社説