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ライチョウ寄生原虫に病原性 研究者グループ分析

ニホンライチョウの親子=2016年7月、北アルプス大天井岳ニホンライチョウの親子=2016年7月、北アルプス大天井岳
 国特別天然記念物ニホンライチョウの腸に寄生する2種類の原虫に、腸管を壊す病原性があることが12日、大阪府立大や日大、中部大などの研究者グループによる分析で分かった。2種類は一定の高い割合でライチョウに感染していることも判明。ライチョウの保護では近年、卵やひなを捕食する野生動物対策の試みが始まったが、新たな脅威が見つかった形で、病原性の詳しい分析や感染対策などが課題になる。

 研究したのは大阪府立大の松林誠准教授(原虫学)、日大の村田浩一教授(野生動物医学)、中部大の牛田一成教授(動物生理学)らのグループ。2種類の原虫は細長い形の「ウエキー」と丸形の「タイプB」で、一部のライチョウの腸に寄生していることは分かっていたが、病原性の有無やどのぐらい寄生しているかは分かっていなかった。

 グループは、環境省の支援などを受けて2006年から研究。北アルプスや南アルプスで野生の個体のふんを採取し、含まれる原虫を分離し、遺伝子を解析した。

 その結果、ウエキーはニワトリに、タイプBはシチメンチョウに、それぞれ寄生する「病原性コクシジウム原虫」に遺伝子配列が近いと判明。南ア北岳の山中で衰弱死したライチョウのひなを分析したところ、この2種類の原虫が腸の粘膜に侵入して腸管を壊していたことが分かった。

 さらに北アや南アで06年に採取したライチョウのふん512検体を調べた結果、41・7%から2種類の原虫を確認。07年も308検体のうち57・5%で見つかった。原虫は気温4度の環境の中でも半年生息していたといい、村田教授は「高山の低温下に合わせ進化し、生存能力を獲得した」とみている。

 グループは、これまでタイプBの仮名で呼ばれていた原虫を新たに「ライチョイ」と命名。今後、ニホンライチョウの近縁亜種スバールバルライチョウを使った感染実験などを実施し、病原性を詳しく分析する。

 今回判明した病原性について、牛田教授は「ライチョウのひなが成長する時期に腸から栄養吸収する障害になり、外敵に狙われやすい弱い個体になる可能性がある」と指摘。松林准教授も「ライチョウ保護に、病原性原虫への対応を念頭に置かなければいけなくなった」とみる。

 ライチョウの保護施策に取り組む環境省信越自然環境事務所(長野市)の福田真・希少生物係長は「今までと異なるミクロの視点で減少要因を指摘した意味で貴重な研究結果。今後の保護対策に生かしたい」としている。

(7月13日)

長野県のニュース(7月13日)