長野県のニュース

斜面

病弱の徳川4代将軍家綱に代わり権勢をふるったのは大老酒井忠清(雅楽頭(うたのかみ))だ。絶頂期の1680年の「お手盛り」は歴史に残る。自らの領地を2万石加増、配下の老中稲葉正則に1万5千石、大久保忠朝に1万石それぞれ増やした

   ◆

主君が病の時、己の利益を図る行為に庶民は怒った。落首にある。〈世の中の加賀(かが)みとならん老中の/美濃(みの)うちばかり加増雅楽(うた)てき〉。加賀守は大久保、美濃守は稲葉。「鏡」と「身内」にかけている。笹沢左保著「徳川幕閣盛衰記(上)」などによる

   ◆

これも歴史に残る「お手盛り」ではないのか。自民党が提出し参院で可決された選挙制度の改定だ。選挙区の合区で押し出された候補者を救済しようと比例代表に「特定枠」を設ける。候補者名を書いた得票が特定枠以外の候補者より少ない場合でも、当選することが可能になる

   ◆

「何もしなくて当選するような人と、一生懸命はいずり回る人が戦うのは不合理。選挙制度は国民のためにあり自民党のためではない」。参院特別委で脇雅史氏は訴えた。元自民党参院幹事長。前回改革で大幅な合区案が身内の反発に遭って更迭された

   ◆

定数6増の改定に野党内にも議席獲得の思惑があり「国民のため」の改革論議は深まらなかった。落首は詩歌の形で時の政情を匿名で風刺した文書。権力批判が許されなかった時代、他に方法はなかったろう。物言える時代なのに、こんな無理押しが通るようでは江戸の庶民に恥ずかしい。

(7月13日)

最近の斜面