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大分・日田祇園で弔いの笛 九州豪雨で犠牲の仲間送る

 亡くなった山本岳人さんの長男朔矢君(左端)ら遺族の前で笛を吹く人たち=20日午前、大分県日田市  亡くなった山本岳人さんの長男朔矢君(左端)ら遺族の前で笛を吹く人たち=20日午前、大分県日田市
 「今年は子どもと一緒に出る」。九州北部の豪雨で犠牲となった大分県日田市の山本岳人さん(43)は、22日からの今年の日田祇園祭に小学4年生の長男朔矢君(9)と参加することを夢見ていた。日田祇園に一緒に参加してきた仲間たちが20日、子どものことをいつも話していたという山本さんを送る弔いの笛を奏でた。

 三味線と太鼓に合わせ、澄んだ笛の音色が約3分間響いた。山本さんが所属していた豆田町の豆田下町地区。静かに耳を傾ける妻佳代さん(39)、法被姿の朔矢君。長女と次女は遺影を持ち、涙ぐむしぐさを見せた。

 町内の住民に山鉾を披露する「流れ曳き」に集まった約40人は、心を込めて笛を吹く山本さんの職場の同僚佐々木秀世さん(67)ら囃子方の7人をじっと見つめていた。

 山本さんは6日、消防団員として地域の見回り中に山崩れに巻き込まれて亡くなった。市内のガソリンスタンドで一緒に働いていた佐々木さんは「いつもにこにこしていて子煩悩。中学生の娘2人と息子の話をいつも職場でしていた」と振り返る。

 山本さんは、囃子方を長年務めてきた佐々木さんの影響で、山鉾の曳き手として300年以上の歴史があるとされる日田祇園祭に約5年前から参加。昨年の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録後、初めてとなる祭りを心待ちにしていた。

 「自分より人を気遣っていた」と知人らは口をそろえる。5日午後、雨が強くなった際には「子どもを迎えにいく」と仕事を早退。その後も消防団の活動と同時に、周囲に「避難したか」と電話を入れていた。

 普段も町内会や学校行事に積極的に参加。複数の役職を任され、将来は地域の中心的な人物となると目されていた。

 山本さんが亡くなった山崩れは、斜面が数百メートル規模で崩落し、川を埋めて対岸まで被害が及んだ。これらの土砂災害を含め、甚大な被害が出た日田市だが、日田祇園祭は疫病や災害の厄よけ神事だとして22~23日に予定通り実施すると決めた。

 弔いの笛を聴いた後、佳代さんは報道陣の問い掛けに「主人も喜ぶと思います」と言葉少なに話した。

(7月20日10時56分)

社会(7月20日)