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上智大生殺害、悔しさ募るばかり 娘奪われた父の21年

 事件を風化させないように建てた「順子地蔵」を前に、思いを語る小林賢二さん=1日、東京都葛飾区  事件を風化させないように建てた「順子地蔵」を前に、思いを語る小林賢二さん=1日、東京都葛飾区
 東京都葛飾区で1996年、上智大4年小林順子さん=当時(21)=が自宅で殺害、放火された事件は未解決のまま、9日で発生から21年。「時間がたてば物事を忘れると言うが、そんなことは絶対にない」。娘を突然奪われた父賢二さん(71)の悲しみ、悔しさは今も募るばかりで、容疑者逮捕の知らせを待ち続けている。

 事件は96年9月9日夕に発生した。葛飾区柴又の自宅から出火し、焼け跡で首を刺されて死亡している順子さんが見つかった。

 家庭の事情で大学進学を諦めた賢二さんにとって、順子さんは自分が果たせなかった夢を実現してくれた存在。中学で英語に興味を持って英語科のある高校へ進学し、上智大外国語学部英語学科に合格したときの思い出を「本人以上に私がうれしかった」と話す。

 「年頃の娘との会話は少なかった」。こう振り返る賢二さんだが、順子さんが終電を逃したときには、頼まれていないのに隣駅まで自転車で迎えに行った。「『お父さん、来てくれたんだ』って。2人乗りで帰る時間が一番充実していた」

 順子さんは、語学力を生かしたジャーナリズム関係の仕事を志望し、2日後には米シアトル大への留学に旅立つはずだった。凶行は順子さんの未来を断ち切り、賢二さんから最愛の娘を奪った。

 賢二さんの願いは、事件解決。「夢半ばで逝ってしまった娘のために、絶対に犯人を逃げ切らせてはいけない」。発生から7年後の2003年、「すがる思い」で有力情報に500万円を自費で提供すると発表した。

 15年間だった殺人罪の時効成立が刻々と迫っていた09年には時効制度の撤廃を求め、世田谷一家4人殺害事件の遺族らと「殺人事件被害者遺族の会(宙の会)」を設立。「被害者家族の気持ちに時効はありません」と訴え、殺人罪の時効廃止を盛り込んだ10年の法改正にこぎ着けた。

 「警察が捜査してくれることが遺族には生きがい。もしかしたら今、この瞬間『犯人が捕まった』と電話がかかってくるかもしれない」

 賢二さんにとって、昨年までは一年一年、時間の積み重ねでしかなかったが、今年は違うという。「21歳で亡くなった順子が生きた時間と、私たちが解決を待ち続け、あっという間に過ぎた時間は同じ長さ。あの子の人生は、こんなにあっけなかったのかと…」。こみ上げる思いに、言葉を詰まらせた。

(9月8日17時56分)

社会(9月8日)