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命のビザ、絆今もと杉原千畝の孫 迫害逃れたユダヤ人と交流

 杉原千畝  杉原千畝  外交官杉原千畝が発給したビザの写しを手にする(左から)杉原まどかさん、マリア・キャムさん、マリアさんの娘のスーザン・ハーストさん、まどかさんの長女=メルボルン(杉原まどかさん提供)  外交官杉原千畝が発給したビザの写しを手にする(左から)杉原まどかさん、マリア・キャムさん、マリアさんの娘のスーザン・ハーストさん、まどかさんの長女=メルボルン(杉原まどかさん提供)
 「命のビザ(査証)」の絆は、戦後70年以上たった今もつながっている―。第2次大戦中にナチス・ドイツやソ連の迫害を逃れた多くのユダヤ人に日本通過ビザを発給した外交官杉原千畝。NPO法人「杉原千畝 命のビザ」(東京)副理事長で孫のまどかさん(51)は、祖父の事跡を国内で紹介する一方、海外にも足を運び、生き延びたユダヤ人やその子孫と交流を続けている。

 「チウネのビザがなければ私たち一家はこの世に存在しない」。昨年9月、オーストラリアを訪ねたまどかさんは、メルボルンで暮らすスーザン・ハーストさん(70)から涙ながらに訴えられた。

 スーザンさんの母マリア・キャムさんは、ポーランド出身の97歳。ナチスの侵攻に追われてリトアニアに避難し、カウナスで領事代理だった杉原のビザを手にソ連、日本、中国を経由しオーストラリアに逃れた。当時を思い出すのが困難になっているが、杉原への感謝は忘れない。子や孫に囲まれ穏やかな笑顔を浮かべる姿を見て、まどかさんは改めて祖父の足跡の大きさに触れた思いがした。

 ポーランドを離れ、一時神戸に滞在し新天地にたどり着いた祖父母を持つダニエル・グリンバーグさん(48)は、母国に残った親族が皆ナチスに殺害された。シドニーに住むダニエルさんは、まどかさんに「1人の命を救う者は世界の命を救うのと同じ」というユダヤ教の教えを引き合いに「『命の贈り物』をありがとう」と謝意を伝えた。

 「杉原ビザ」で救われたのは最大約6千人とされる。当時ドイツとの関係を深めていた日本。杉原はユダヤ人の窮状を目の当たりにし、発給を許さなかった外務省の方針に逆らった。キリスト教徒でもあった杉原は生前「この人たちを救わなければ神に背く」「人道、博愛精神をもって臨んだ」と妻だけに漏らしていた。

 こうした事情もあり、戦後、外務省を追われるように退職。国内で名誉回復されたのは死後だった。まどかさんが、本人から外交官時代の苦労を聴く機会はなかった。

 まどかさんは、祖父の歩みをたどり、理念を伝えるのが使命だと静かに語る。「世界中で紛争が絶えない今、命の重みをかみしめ、勇気を持って行動する大切さを訴え続けたい」

(1月27日16時20分)

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