競技の紹介
☆氷上の格闘技
直径8センチ足らずのパックめがけて、身長190センチ、体重90キロを超える大男たちが時速60キロとも言われるスピードで突進、激突する。厚い防具と、独特のマスクで身を固めるゴールキーパーは、時速200キロ近い速さで放たれるシュートを超人的な反射神経ではじき、またはキャッチする。そのスピードと迫力は「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケーの醍醐味だ。
特にその最高峰であるプロリーグ、NHL(National Hockey League)は、北米をはじめ、ロシア、チェコ、スウェーデンなど約600人の世界各地の猛者が26チームに分かれて、最強チームの証であるスタンレーカップを目指して熱戦を展開している。
長野五輪では、五輪史上初めて、このNHLのプロたちがこぞって参加。バルセロナ五輪で米国のNBA(全米プロバスケットボール協会)選手らが初参加した「ドリームチーム」が、アイスホッケーでも実現する。
1988年のカルガリー大会からプロ参加は認められていたものの、NHLシーズンと重なるため、契約上チームの試合を抜けられないトッププロたちは、五輪参加の道を事実上閉ざされていた。が、長野五輪期間中、NHLの各チームがその80年の歴史で初めて、五輪のためにシーズンを中断することで合意し、プロの参加の道が開けた。
長野五輪には男子はカナダ、アメリカ、ロシア、チェコ、スウェーデン、フィンランド、フランス、イタリア、ドイツ、スロバキア、ベラルーシ、カザフスタン、オーストリア、日本の14チームが参加する。このうち、フィンランドまでのトップ6は1次リーグが免除され、2次リーグからの登場となる。
長野五輪から初めて公式種目となった女子アイスホッケーは、今年行われた世界選手権の結果、カナダ、アメリカ、フィンランド、中国、スウェーデンの上位5チームに開催国の日本を加え、初の優勝国の座を争う。

アイスホッケー男子予選 日本−ドイツ戦(98年2月7日)
☆現在の世界のアイスホッケー事情
現在、アイスホッケーは、オリンピック、世界選手権、ワールドカップ(96年からカナダカップを発展、改称)の3大大会で、各国が実力を競っている。世界選手権の最高峰、Aグループには12カ国が所属、1次リーグを勝ち上がった6カ国が2次リーグでトップの座を争う。
96年大会では、チェコがカナダを破って国家分裂後、初の優勝を飾った。3位決定戦はアメリカがロシアを破った。
97年大会は、カナダが決勝(3回戦制)でスウェーデンを破り、3年ぶり21度目の優勝を飾った。3位決定戦はチェコがロシアを破った。
プロ参加が認められている世界選手権は、NHLレギュラーシーズン後に行われるため、レギュラーシーズンでプレーオフ進出が果たせなかったプロチームの選手も参加している。
昨年から、それまでのカナダカップから規則と名称を変えたワールドカップ大会は、NHLシーズン入り前に行われるため、プロ選手が母国のユニフォームを来てプレーできる貴重な大会だ。96年大会では、ともに登録選手すべてをNHL選手で固めたアメリカとカナダが決勝で対戦、アメリカが初優勝した。
ちなみに、カナダカップ第1回大会(76年)はカナダ、第2回(81年)はソ連、第3回(84年)、第4回(87年)、第5回(91年)はいずれもカナダが優勝している。
☆世界の強豪たち
五輪では、かつて「ビッグレッドマシン」の異名をとった旧ソ連チームが、64年のインスブルック大会(オーストリア)から76年のインスブルック大会まで4連覇するなど、最多の7つの金メダルを獲得している。(92年のアルベールビル大会でEUNとして獲得した金メダルは除く)
しかし、ソ連崩壊後は国内の有力選手がNHLに流出してしまったため、現在のロシアにはかつて旧ソ連が誇っていた圧倒的強さは見られなくなっている。
初期の段階では圧倒的強さを誇り、過去6回金メダルを獲得しているカナダは、52年のオスロ大会で獲得して以来、金メダルに見放されている。(72年の札幌、76年のインスブルックはアイスホッケー競技参加をボイコット)が、NHL選手参加が認められた長野五輪では、発祥の地として復権をめざすべく全力を注いでくるのは必至で、優勝候補の筆頭に挙げられている。
過去2回優勝のアメリカも、登録選手をすべてNHL選手で固め、カナダと並んで優勝候補のトップに名を連ねている。
欧州勢では、フィンランド、スウェーデン、チェコもNHL選手中心にチームを編成し、優勝争いに絡んでくると予想される。
☆日本は
五輪での日本勢(男子)は、60年のスコーバレー大会での8位が最高。世界選手権でも、カザフスタンなど、かつて旧ソ連に所属した国々の参加で、96年大会ではBグループ最下位に終わり、9シーズンぶりにCグループに転落した。
97年3月に開かれた世界選手権Cグループでは、決勝リーグに残ったものの4位に終わった。だが、世界選手権の規定が変更になり、Aグループに極東枠が1ヵ国設けられることになったため、世界選手権で中国より上位の成績を残した日本が、次回からはAグループに参加することになった。しかし、長野五輪に集う各国との実力差は歴然だ。
80年のレークプラシッドを最後に五輪参加の厚い壁に阻まれている日本は、NHLカルガリー・フレームスの元ヘッドコーチ、デイブ・キング氏をゼネラルマネージャーに、元スイスB代表監督のビヨン・キンディング氏を監督に招き、実力強化に力を入れている。また、日本リーグで活躍している日系人選手も帰化を申請、貴重な戦力となった。
女子アイスホッケーの勢力図は、現在、アメリカ、カナダの2強に、フィンランド、スウェーデン、中国の五輪出場国が続く。日本は、96年4月にカナダで開かれたパシフィック大会でカナダに0ー18、中国に1ー5で完敗。男子とともに、トップチームとの実力差は否めない。今後、長野五輪へ向け、若手中心のチーム編成で海外強化遠征などをこなし、強化に努めていく構えだ。
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