|
スピードスケートは機械力や重力の助けを借りず、自力で走るものとしては最もスピードが出る競技。鍛え上げた体から生み出されるパワーを、厚さわずか0.9ミリのスケートの刃(ブレード)で氷に伝え、しかも、刃の内側と外側のエッジを巧みに使い分けて滑る。高速でカーブを駆け抜ける五百メートルなど短距離では技術的な優劣が大きな比重を占め、器用な日本人選手が得意としてきた要因といわれています。
<インかアウトか>
五百メートルは長野五輪から2回のレースの合計タイムで競うことになりました。選手はスタートして最初のカーブ(第1カーブ)を過ぎると、バックストレートでイン(内側)からアウト(外側)へ、アウトからインへとトレーンが入れ替わりますが、一般的に第2カーブを大きく回れるインレーンスタートの方がタイムはいいのです。一発勝負のこれまでの方式だと、組み合わせ抽選の運不運が大きく影響しました。長野では1日目にインからスタートした選手が2日目はアウトからのスタートになります。
カルガリー五輪の黒岩彰選手が、その4年前のサラエボ五輪で失敗したのと同じ「4組アウト」からスタートして銅メダルを獲得したのは、組み合わせの不思議な縁だったといえます。
男子五百メートルではたかだか36−37秒の勝負で、見ている者にはあっけないほどですが、そこに至る過程の選手の打ち込みようはたいへんなものです。地元だけに日本選手のプレッシャーも大きいでしょう。しかも二日間のレース。初日にリードした選手、追いかける形の選手…心理状態も大きなポイントになるでしょう。
五百メートル以外の種目は従来通り1回のタイムで競います。

<ペース配分>
短距離は瞬発力、長距離は持久力が要求されるのは陸上競技などと同じ。ペース配分が勝負を決める五千メートルや一万メートルの長距離では、選手が1周のラップをどう刻んでいくかを見ていると興味がわいてきます。ラップが大きく変動するのはスタミナのロスが大きい。終盤になってラップが上がってくるようなら、力が残っている証拠です。声援は選手にとっても大きな力になるそうです。
中距離の千五百メートルはいち早くトップスピードに乗り、スピードをいかに維持できるかの勝負。中長距離が弱かった日本勢も、96年には野明弘幸選手(現長野県教員ク・当時日体大)が千五百メートルで世界記録をマークするなど、ここ数年で世界のレベルに肩を並べてきました。
<記録の興味>
いい記録が出るか出ないかは、氷の条件と選手が受ける風圧に影響されます。滑る氷づくりには、長野県が誇る職人肌の技術者たちが取り組みます。エムウエーブは屋内リンクですから風の心配はありません。ただ、長野市の標高は300メートルほどと低いため、比較的気圧が高い。空気の密度が濃いということは短距離では空気の抵抗が大きくなり、記録面では不利です。世界の記録製造リンクといわれた浅間温泉国際スケートセンター(松本市)は標高約1000メートルにあります。逆に、長距離では、呼吸が楽になる分だけ、好記録が望めるかもしれません。
<スラップスケート>
昨シーズンからにわかに注目されているのが、スケートの刃のかかと部分が靴から離れる仕掛けの「スラップスケート」。オランダなど外国勢が特に中長距離で成果を挙げ、エムウエーブで行われた世界選手権でも旋風を巻き起こしました。短距離にも向くかどうか。スケーティングのテクニックも変わってくる可能性があり、動向は気になるところです。
|