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強烈ダッシュ武田2冠 車いすバスケで鍛えたパワー



 胸から肩にかけて筋肉が躍動する。しかし、上体をあおる動作は少ない。重心が前後に振れる減速要素がないから、持ち前のパワーがうまくスピードに結び付いた。

 百メートルで14秒83の世界タイ。五百メートルは世界記録に1秒41と迫る1分10秒70。わずか2時間余りの間に、2つの金メダルを獲得。「信じられないほどうれしい。監督やスタッフのおかげ。応援してくれた人たちにも感謝したい」と声が上ずった。

 百メートルは手ごたえ十分で大会を迎えた。前日のタイムトライアルで14秒4台。その前には14秒3台もマークしており、練習では世界記録を上回る記録が何度も出ていた。

 だから、この日のタイムは会心というわけではなかった。大観衆の中でのレースが初めてだった武田は「普通の精神状態ではなかったから」と言った。「タイムはここ数日で最低。明日やれば、もっといいのでは」とは三井監督だ。

 車いすバスケットボールで鍛えたパワーが持ち味。昨年夏の米ミルウォーキー合宿から、監督らの指示で百メートルに専念してきた。「ここ一カ月はスタート練習ばかり。スタートして3発目までのスピードと、10メートルまでのスティックワークを強化してきた」という。そのスタートがうまく決まった。

 狙っていた百メートルの優勝で、気持ちに余裕が出た。続く五百メートルは「表彰台に上がれればいい」と気負いはなく、得意でないというカーブワークでも減速を抑えた。いち早くトップスピードに乗り、100メートルを最も速い15秒05で通過。終盤までスピードは鈍らなかった。

 十一年前、二十一歳の時に交通事故で脊髄(せきずい)を損傷した。「どんどん外に出て、障害を持ったからと言う考えを捨ててほしい」。

 金メダル獲得で芽生えた自信を胸に、障害者へのメッセージを送った。



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Copyright 1998 信濃毎日新聞 The Shinano Mainichi Shimbun