青空に舞う若者 御柱祭の熱気最高潮



 四日午前十時過ぎ、トップを切った「本宮一」の御柱が、バランスを崩しながらも頂上から“落ちた”。木やり、ラッパが響く中、急坂の上で徐々に高めた緊張とエネルギーが一気に噴き出す。諏訪大社御柱祭の上社山出し祭のハイライトの一つ、木落とし。色とりどりの法被を着た氏子たちが一斉に御柱に駆け寄り、周辺をぎっしり埋めた観衆から沸き起こる歓声が祭りの熱気を増幅した。

 本宮一は長さ一九・五メートル、重さ七トン。柱の前後に付けたV字型の「めどでこ」には、おんべを手にした若者ら三十人近くがとりついた。めどでこが左右に揺れ、木やりとラッパで曳(ひ)き子と心を一つにする。柱が前にせり出すたびに、見物客からどよめきが起こった。

 めどでこの一番上に乗った岩井節三さん(37)=茅野市上原=は「てっぺんから見えるのは人のじゅうたん。本当にじーんとしたよ」。本宮一は落ちた後、ややバランスを崩し右に傾いた。後方で柱を支えていた追い掛け綱を切った父親の岩井幸人さんは「切るのは五回目。今回は途中で細いロープが切れたのでうまくいかなかった」と話し、坂側の仲間を心配していた。

 諏訪署によると、午前の人出は曳行(えいこう)した二万人を含め約十万人。木落とし坂では、周囲の家や空き地に作られた桟敷席のほか、坂の下を横切るJR中央東線のフェンスにも見物人がすき間なく押し寄せた。観客の一人はカメラを手に「人の写真を撮りにきたようなものだ」。電車は木落とし坂付近で徐行運転し、乗客も車窓から祭りを楽しんでいた。

(1998年4月4日 信濃毎日新聞掲載)