山あいに響く木やり・ラッパ 「安全第一」気を配り



 前日までの悪天候を吹き飛ばし、うららかな陽気の中で十日始まった諏訪大社御柱祭の下社山出し祭。木やりやラッパの音がにぎやかに鳴り響く中、諏訪郡下諏訪町の山道で御柱を引く氏子らの表情も晴れやかだ。若者の参加がこれまでになく多く、曳(き)子の中には女性や子供たちの姿も目立ち、祭りの盛り上げに一役買った。御柱の曳行(えいこう)が始まる前、「危ない祭り」というイメージを変えようと、大総代らは一様に「安全第一」と氏子らに訴えていた。

 岡谷市御柱祭典委員会の戸谷浜造委員長は、曳行の先陣を切った「春宮四」の出発直前、「いい天気に恵まれてよかった」と笑顔。今回は、てこや元綱、追い掛綱など係の数を前回より二、三倍増やしたという。「若者が多く、例年より盛り上がるだろう」と期待し、「安全面には十分配慮する」と気を引き締めた。

 曳行出発地点の同町大平の「棚木場」(たなこば)近くに山荘を持つ小野よし子さんは早朝から集まった氏子らに豚汁を無料で振る舞った。「喜んで食べてもらう顔を見るだけでうれしい」と小野さん。友人たちに手伝ってもらい、千食分を作った。氏子らはおいしそうに熱い豚汁をすすりながら、曳行に向けて英気を養っていた。

 「春宮三」の中綱安全係を務める岩本正直さん(63)はメガホンを手に「ヨイショ、ヨイショ」と声を掛け、曳き子を盛り上げた。「予想より曳き子の数が多く、熱気を感じる。祭りを今日一日、十分に楽しみたい」と話していた。

 諏訪市上諏訪の氏子らが曳く「秋宮二」の御柱で、西大手町の「旗持ち」をする田中秀男さん(58)は、今回で五回目の参加。「何万人の観衆の前で、木落とし坂を一番に下る。何とも言えないいい気分だよ」とうれしそうに話していた。

(1998年4月10日 信濃毎日新聞掲載)