TOP2014年09月登山者、見えぬ全体像 登りやすい山、登山届出さぬ人も
剣ケ峰に続く登山道を捜索する消防隊員らの列=29日午後0時18分(本社チャーターヘリから)

 御嶽山が27日に噴火して3日目の29日になっても行方不明者がどの程度いるのか、明確に分からない状況が続いている。29日時点で、死者、心肺停止状態の登山者は計36人。木曽郡木曽町内の3カ所に設けられた家族や友人ら向けの待機施設には同日時点で100人以上が訪れ、安否を心配している。行方不明者について県は「精査中」と説明。家族から安否が確認できないと連絡を受けた人のリストを公開する方針だが、情報の取りまとめは進んでいない。

 「現状で、どの程度の要救助者がいるのか、正確に言うことはできない」

 現地で県警の救助隊の統括に当たる県警警備部機動隊の金森勉副隊長(54)は29日、御嶽山の山頂付近について、視界が悪く、灰が膝よりも高く積もっている箇所があり、火山ガスの影響で捜索できる時間も限られているとして、捜索の難しさを語った。

 行方不明者の安否確認のために訪れた家族らのため、木曽町が設けた待機施設。29日夕に集まった人たちが求める安否確認の対象人数は、これまでに心肺停止状態で見つかった登山者らの数を上回る47人に上る。

 安否や所在が分からない人の関係者からは悲痛な声も。27日に日帰りの予定で御嶽山に出発した愛知県警知多署の男性巡査部長(57)は行方が分からず、署員は「無事に帰ってきて」と祈るように話した。

 県消防課などによると、安否不明者の情報は、登山口などで出す登山届や、登山口近くの駐車場に止めてある車の所有者の割り出し、県警や消防に寄せられる家族や知人からの問い合わせに基づき、県や県警が把握に努めている。

 阿部守一知事は、土石流で家屋が被災した場合などは主に住民を対象に安否確認を進められるが、今回は登山者や観光客が対象のため、「通常の災害とは違う形で把握していかざるを得ない」と話す。

 県警が開設した安否確認用のフリーダイヤルに28日夕まで寄せられた情報は約240件。中には「知人が長野に出掛けた」といった具体性に欠ける情報もあり、精査に時間がかかっているという。県や県警は安否不明者の名簿を作るため、氏名、性別、年齢、住所といった情報の選別を進めているが、それぞれの確認に手間取り、名簿公表のめどは立っていない。担当者は「迅速に進めなければいけないことは分かっているが、不確かな情報は載せられない」と説明する。

 御嶽山は登山の難易度が高くないため、登山届などを出さずに気軽に入山する例が少なくないことも、不明者情報の把握を難しくしている。

 木曽町三岳の「黒沢口」からの登山道は御岳ロープウェイで、同郡王滝村の「王滝口」からの登山道は車などで、それぞれ7合目まで登ることができる。そこから山頂までは、比較的なだらかな斜面を歩いて山頂までわずか3時間ほどだ。このため、岐阜県側よりも長野県側から入山する登山者が多い。

  地元の御嶽山黒沢口案内人組合の倉本豊組合長(59)=木曽町日義=は「気軽に登れるため、登山届をきちんと出すのは登山者の半分程度ではないか」と話す。

 一方、御嶽山の西側に当たり、入山者も少ない岐阜県は「こちら側には行方不明者はいない」と説明する。登山届を出していたパーティーの全員の無事が確認されたほか、29日に行った登山道の確認でも異常はなく、安否不明の問い合わせもないという。

 長野県警も噴火直後の27日夕から28日午後までに、下山者の多い王滝口と黒沢口に警察官を配置、下山者の名前などを聞いて計136人の下山を確認した。だが担当者は「噴火時にいた登山者全員を確認するのは難しい」と漏らす。県警や消防、自衛隊は30日の救助活動で、心肺停止状態の登山者らの収容を進めるほか、29日までに捜索できなかった場所でも捜索を進める方針だ。

2014年9月30日掲載