TOP2015年03月遺族の心に響く御詠歌 王滝村民の会訪ね月命日の唱和にお礼
御詠歌会のメンバーと交流した野口さん(左)と所さん(左から2人目)=27日午後1時半すぎ、王滝村の鳳泉寺

 昨年9月27日の御嶽山の噴火で、夫の泉水(いずみ)さん=当時(59)=を失った北安曇郡池田町の野口弘美さん(57)と、次男祐樹さん=当時(26)=を亡くした愛知県一宮市の所清和さん(53)が27日、木曽郡王滝村の鳳泉寺を訪れ、同寺を拠点に活動する御詠歌会の女性村民と交流した。会は鈴や鐘の音に合わせ御詠歌を唱え犠牲者の冥福を祈り続けている。遺族2人は半年がたっても、家族の死を受け入れる難しさを感じており、村民の優しさに心を和ませた。

 「時間が止まっている」。雪をまとった御嶽山が青空に映える山麓の展望台で、2人は午前11時52分、半年を振り返った。所さんは「悲しみよりも、助けられる命だったのでは...」。噴火前に火山性地震が増えていたのに入山が規制されていなかったことへの疑問がある。野口さんは「噴火する山ということをもっと登山者に知らせてほしかった」と思っている。

 噴火後、国や地元自治体が次々と防災対策を見直しているが、所さんは「ここが悪かったと認めた上で、改善してほしい」。悲しみが深い分、地元が誘客を優先して安全対策を後回しにしていたのではないか、とさえ思ってしまう。

 一方で、何回か村を訪れるうちに、村内の献花台で冥福を祈り、御詠歌を唱える有志がいることを知った。「見ず知らずの人たちが」とありがたく思う気持ちが募り、今回、御詠歌会に「お礼をしたい」と、昨年末から交流している野口さんに声を掛けた。

 御詠歌会は、約50年前に発足。現在は50〜90代の30人ほどが月数回、村唯一の寺院の鳳泉寺で練習を重ねる。噴火後、会員の原清子さん(96)が「犠牲者のために何かできないか」と月命日に御詠歌を唱えるようになった。

 2人は27日午後、鳳泉寺本堂に招かれた。12人の会員が鈴と鐘を鳴らし「つらき浮世も耐えゆかば、喜び生くる日は近し」などと唱和。所さんは「心に響いた。山麓で息子を見守っていただきありがとうございます」と涙を拭った。野口さんも「じーんと来た」と目頭を熱くした。会員の佐口幸子さん(80)は「私たちがちゃんと見守りますよ」。

 2人に笑顔が戻り、手作りの漬物を味わいながら懇談した。1984(昭和59)年の県西部地震で夫を失ったのを機に御詠歌会に入った水宅(みずや)ゆきさん(78)は「亡くなったことは消えないよね。気持ちは分かる」と野口さんに寄り添った。「思ってくれる人がいて幸せです」と野口さん。

 所さんは「供養になった。来る度に会って話したい」と期待した。水宅さんは「またお寺で会いたい」。原さんも「この縁を大事にしていきたい」と話した。

2015年3月28日掲載