TOP2015年07月「規制線」直下で不明者発見願い 複雑な思い抱え「女人堂」7月営業開始
御嶽山や再捜索について思いを語った起さん(左)と小寺さん=30日、木曽町三岳の女人堂

 御嶽山の噴火災害で、山頂に最も近い場所で行方不明者6人の再捜索を見守っているのが、木曽郡木曽町の黒沢口登山道8合目の山小屋「女人堂」のスタッフだ。経営する起(おこし)信幸さん(39)らに今夏、二ノ池本館支配人だった小寺祐介さん(35)が加わった。二ノ池本館を含む山頂部は入山規制が続くこともあり、例年より登山者の姿は少ない。30日に訪ね、再捜索や御嶽山への思いを2人に聞いた。

 御岳ロープウェイの山頂側、飯森高原駅から約1時間、木々の間の登山道を登った。森林限界の上の山小屋に着くと、見晴らしが開け、晴れ間ものぞいた。小屋の少し先からは入山が規制されている。

 起さんがスタッフにてきぱきと指示を出していた。女人堂は入山規制が火口約2キロ圏内に緩和された今月1日に今年の営業を始めた。「行方不明者がいる中で複雑な思いもあるが、地域に住む者として、山小屋を守る必要もある」

 営業開始前、町がヘルメットやゴーグルを支給した。防災面で町と連絡を取り合っており、火山の異変を伝えるスピーカーなども整っている。起さんは「亡くなった方に申し訳ない」と、安全対策を充実し、営業していることを積極的にアピールしていない。

 この日、登山道で出会ったのは、徳島県の御嶽山を信仰する37人のグループのほか、十数人ほど。女人堂の利用者も少なく、起さんは「今は苦しい時。乗り越えていかなくては」と話す。それでも「まだ恵まれている」と言う。御嶽山の山小屋で営業しているのは、女人堂を含め3カ所。規制範囲内の山小屋は夏山シーズンの最盛期の営業見通しが立っていない。

 その一つの二ノ池本館の小寺さんは、起さんに声を掛けられ、女人堂で働き出した。昨年9月の噴火では起さんと同様、火山灰にまみれながら、登山者を誘導して下山させた。小寺さんは「御嶽山全体の山小屋関係者が力を合わせ、今の状況を乗り切っていきたい」と口にした。

 起さんも将来の入山規制緩和を見据え、「ほかの山小屋の営業再開に向け、同業者として最大限の協力をしたい」と考えている。

 2人は行方不明者の捜索再開で、一日も早く見つかってほしいと願う。小寺さんは1月、木曽町三岳の献花台で不明者に思いをはせた。「温かい家族のもとに戻ってほしい」。その気持ちは夏になっても変わらない。

2015年7月31日掲載