TOP2015年09月「まだ山に...」 仲間の家族に寄り添う下山者
行方不明になった弟と同行していた男性(右)と話す高橋恵子さん(中央)と山本磨珠さん=27日午後8時23分、木曽町新開

 御嶽山の噴火災害で、行方不明になっている高橋裕輝さん=噴火時(40)=の母と姉が27日、高橋さんと一緒に登って生き残った神奈川県内の男性(48)とともに追悼式に参加した。行方が分からない複雑な悲しみを抱える母と姉は、噴火後から山麓を毎月訪れ慰霊をしてきた男性の思いに触れた。男性も「この1年間やってきたことは間違っていなかった」と前を向いた。

 高橋さんは、男性ら会社の同僚計9人で御嶽山に登った。山頂で噴火に襲われ、5人が亡くなり、裕輝さんは行方不明になった。男性は、山頂にあった祈祷(きとう)所の壁際に身を隠し、噴石をしのいだ。

 男性は下山後、自分にできることを自問した。上司に毎月27日の休暇を申請。山麓の献花台を訪れ、同僚を慰霊し、裕輝さんが早く見つかるよう祈った。「自分が犠牲になっていたら...」。家族の気持ちを想像し、当時を思い浮かべると、涙が出た。厳しい冬も通った。雪解けとともに入山規制が緩和され、訪れる場所は山頂に近づいた。

 裕輝さんの再捜索が迫る7月27日、黒沢口登山道8合目にある山荘「女人堂」前の献花台。オーナーにガーデンライト6本を渡した。当時の行方不明者6人に「ライトを頼りに下ってきて」と願った。献花台脇に並べられた。

 裕輝さんの姉の山本磨珠さん(46)=札幌市=と、母親の高橋恵子さん(73)=同=は再捜索中、山麓で待った。だが、再捜索でも裕輝さんは見つからず、山本さんに「2度目の悲しみ」が込み上げた。打ち切り3日後の8月9日、恵子さんは、山頂に近づきたいと登った7合目の行場山荘の従業員に、慰霊を続ける男性の存在を知らされた。

 恵子さんは帰宅後、会社に連絡を取り、男性に電話で「裕輝はいい人に巡り合って幸せ」と感謝した。再捜索の打ち切り後、心のバランスを失った高校生の長女を支えることに追われていた山本さんも、慰霊を続ける男性に会いたくなった。

 26日から男性の運転で追悼式場など山麓を回った。27日、宿泊先の木曽郡木曽町の民宿に戻り、こたつを囲んだ。男性は「仲間が山にいる。またサポートさせてください」。恵子さんは「裕輝が喜んでいるよ」と笑顔を見せた。山本さんも「勇気をもらった。私たちも元気でいないとね」。

2015年9月28日掲載