TOP2016年03月御嶽信仰支えた宿に幕 木曽で信者専用に大正期から営業
思い出のある旅館「中の湯本館」を見つめる浦沢さん=木曽町三岳

 大正時代から約100年続いた木曽郡木曽町三岳の旅館「中の湯本館」が、3月末で閉じる。御嶽山の登山道にあり、御嶽信仰の信者専用の宿として親しまれてきた。3代目の浦沢英一さん(84)、あさ子さん(82)夫婦の高齢化もあって決断。浦沢さんは「親戚のような付き合いだった」と、宿泊客との交流を振り返っている。

 旅館は、御嶽山へ向かう県道上松御岳線沿いの黒沢口登山道3合目半に当たる場所にある。浦沢さんの祖父が100年ほど前に始めた。旅館はかつて木造だったが、30年ほど前に改築して鉄骨造りにした。2、3階部分の13部屋に70人が泊まれる。

 最も利用者が多かったのは昭和30〜40年代で、30ほどの御嶽信仰の講社が訪れた。浦沢さんはかつて、県内の製薬会社に勤める傍ら、旅館が忙しくなる7、8月に会社を休むなどして手伝った。最近は信者も高齢化し、代表者だけが山頂に登り、他の人は山麓で待っているケースが増えたという。

 浦沢家は中の湯本館を始める前から、黒沢口登山道6合目で山小屋「中の湯」を営んでいた。1989年に御岳ロープウェイの運行が始まると、これを使って7合目まで登り、そこから頂上を目指す人が増えたこともあって、山小屋は10年ほど前に閉じた。

 2014年9月の御嶽山の噴火以降も、利用する講社は減ることはなかったが、昨年は訪れる人数が1割ほど少なかったという。

 浦沢さんはこの冬、体調を崩して入院。これを機に、旅館を閉めることにした。「今まで使ってくれた人に申し訳ないと思う」と話している。

2016年3月30日掲載