TOP2016年08月「いつか連れて帰るから」 9月3日に家族の会が再捜索
噴火時刻の午前11時52分にアラームが鳴る野村正則さんの腕時計=愛知県刈谷市

 2014年9月27日に起きた御嶽山の噴火災害の被災者家族らでつくる「山びこの会」は26日、小型無人機「ドローン」を使った行方不明者5人の再捜索を9月3日に行うと発表した。王滝頂上山荘から山頂の剣ケ峰までの「八丁ダルミ」やその南東側の谷筋を飛行して画像を撮影、持ち物などの手掛かりを探す。

 山びこの会の会員家族と同会が調査を委託したドローンの製作販売会社「サイトテック」(東京)の操縦士ら約10人が参加。長野県木曽郡木曽町側の黒沢口登山道を登り、石室山荘(9合目)手前の標高約2700メートルの平らな場所でカメラを取り付けたドローンを飛ばし、高精度カメラで地上を撮る。

 山びこの会事務局代表のシャーロック英子さん(57)=東京都=は、熊本地震で行方不明だった大学生の遺体が発生から約4カ月後に見つかった例に触れ、「本格的な捜索につながる手掛かりを見つけたい」としている。悪天の場合は4日に延期する。

<山に誘った叔父「新しい望みができた」>

 御嶽山噴火で行方不明になっている愛知県刈谷市の大学生野村亮太さん=噴火当時(19)=と一緒に噴火に遭った叔父で同市の野村正則さん(53)が26日までに、信濃毎日新聞の取材に応じ、ドローンによる再捜索について「新しい望みができた」と語った。亮太さんを山に誘ったという自責の念があり、捜索の関係者に感謝し、手掛かりの発見を期待している。

 「亮太を含めた5人の行方不明者が社会で風化しないよう発信したい」と、噴火時の詳しい様子などについても初めて証言した。

 正則さんと亮太さんの自宅は、道を挟んだ向かい。亮太さんが幼い頃から毎日顔を合わせていた。「わが子のような存在」の亮太さんは、両親に気恥ずかしくて話せないことも、正則さんには打ち明けてくれた。正則さんは「一緒に山に登れば普段しゃべらないことをもっと話してくれるんじゃないか」と御嶽山に誘った。

 2014年9月27日、八丁ダルミを登山中、噴火に巻き込まれた。黒煙に包まれ、逃げる亮太さんを見失い、地面にへばりつき噴石と熱風をしのいだ。辺りが明るくなり、降り積もった灰で荒涼とした斜面を「亮太」と叫びながら探した。下山ルートの王滝頂上山荘や登山口の田の原にも亮太さんの姿はなかった。

 翌28日に警察、消防、自衛隊の捜索が始まったが、発見に至らず10月半ばで中断。正則さんは「僕が亮太を誘わなければ」と自責の念をずっと消し去ることができなかった。15年夏の再捜索でも見つからず、県災害対策本部の大規模捜索は終結。「ほそぼそとでも続けられないのか」。同本部職員にやり場のない気持ちをぶつけた。

 山頂一帯は入山規制が続いてきた。「あの一帯にいるはずなのに、どうしたらいいんだ」ともどかしい思いが募る中、山びこの会が昨秋、独自の捜索の可能性を探る専門部会を設立した。

 専門部会では行方不明者の家族に共感する遺族が、地元の自治体や山岳関係者、ドローンの開発業者と折衝。亮太さんが逃げたと推定されるルートも探り、捜索の実現にこぎ着けた。正則さんは「自分が遺族と同じ立場だったらそこまで協力できただろうか」と感謝する。自身も捜索費の寄付への協力を友人に呼び掛けた。

 正則さんは、噴火した午前11時52分にアラームが鳴るよう腕時計を設定。毎日、「いつか連れて帰るから」と御嶽山の方に手を合わせている。

 3日の再捜索には同行する予定で「どんな小さな物でもいい。発見への糸口が出てきてほしい」と願っている。

2016年8月27日掲載