TOP2016年09月少しでも近くへ...仰ぐ頂 遺族ら登山道で祈り
噴火2年の御嶽山。火山灰に覆われていた剣ケ峰(奥)から王滝頂上(手前)にかけて、灰が流れて茶色い地肌も見えた。左側に火口がある=27日午後1時45分(本社チャーターヘリから)
噴火時刻から長く祈り続けた猪岡孝一さん=27日午前11時54分、御嶽山の二ノ池

 犠牲者58人、行方不明者5人を出した2014年9月27日の御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火災害から2年を迎えた27日、規制されていない火口約1キロ圏外の登山道には、多くの被災者が出た山頂付近にできる限り近づき祈りたい―と願う遺族らが登った。火山灰が一部残る登山道をたどり、噴煙が上る山頂付近を仰ぎ見ながら、思い思いに犠牲者の冥福を祈った。

 弟の哲也さん=当時(45)=とその妻洋海(ひろみ)さん=同(42)=を失った会社経営、猪岡孝一さん(54)=東京都小平市=は「2人が亡くなった場所の最も近くで噴火の発生時刻を迎えたい」と木曽郡木曽町側の登山道を、現在の規制範囲ぎりぎりの二ノ池まで登った。

 昨夏の捜索で見つかった哲也さんとともに戻った大切なカメラを持参し、2人が見つかった山頂近くを見上げた。残っていた最後のコマの撮影時刻は午前11時52分24秒。涙を拭いながら腕時計で確認し、その時刻から2分余り、頭を下げて祈った。

 噴火後、2人が残した大学1年生の長男翔さん(18)の親代わりになった。まぶたには長男を残したまま逝った洋海さんの無念の表情が浮かんだ。「なんで弟夫婦が登山した時に噴火が起きてしまったのか。変えられるものなら変えたい」と悔しがった。

 24日に入山できるようになった同郡王滝村側の王滝口登山道9合目。名古屋市の会社員丸山泰明さん(44)が午後2時ごろ、花を手向けた。噴火の日に一緒に登っていた会社の同僚の大脇信治さん=当時(40)、愛知県小牧市=を失った。噴火後、生き残った自責の念に苦しんだ。「大脇さんが亡くなった付近まで規制解除されたら登って花を手向けたい」と願った。

 王滝口登山道の規制解除に合わせ新設されたパトロール員の伊藤太一さん(43)=王滝村=は、噴火の発生時刻に合わせ9合目に来た。帽子を脱いで頭を下げ5分余、黙とうを続けた。噴火後「自然に対する畏怖を抱きながら山を眺めるようになった」と話した。

2016年9月28日掲載