TOP2017年01月「社会で検証を」25日提訴 原告参加の岡山の遺族
生前の英樹さんや御嶽山の写真をまとめたアルバムに見入る堀口純一さん=岡山県赤磐市

 御嶽山噴火災害で国と県に損害賠償を求めて25日に提訴する国家賠償訴訟の原告に加わる遺族の高校教員堀口純一さん(70)夫妻=岡山県赤磐市=が24日までに、信濃毎日新聞の取材に初めて応じた。亡くなった長男英樹さん=当時(37)=が御嶽山登山を計画し、同僚2人も亡くなった。自責の念も抱いてきた純一さんは、事前に噴火警戒レベルを引き上げなかった気象庁の判断を疑問視し、問題点を明らかにしなければ息子もうかばれない―と感じている。

 都内で投資会社に勤めていた英樹さんは、2014年9月27日、同僚の男女2人と御嶽山に登った。3人は山頂の剣ケ峰で噴火に巻き込まれ命を落とした。

 英樹さんの暮らしぶりを詳しく知らなかった純一さんは、葬儀後、友人やほかの同僚に話を聞いた。「ハイキング程度だろう」と想像していた趣味の登山は、標高3千メートル級の北アルプスにも足を運んでいた。当日の登山も経験豊かな英樹さんが中心に準備し、出発前日の26日、目的地を苗場山(長野・新潟県境)から御嶽山に変えたことが残されたメールで分かった。

 純一さんは噴火直後、木曽郡木曽町の家族待機所で、英樹さんと同行して亡くなった同僚男性の親族に「息子が段取りをしてこんなことになってしまって...」と頭を下げた。親族に「(噴火前には)きれいな眺めを楽しんだと思います」と言われたが、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 慎重で何ごとも細かく調べて行動していた英樹さん。周囲の登山仲間たちは「しっかり調べてくれて安心だった」と振り返った。以前、活火山の草津白根山(群馬・長野県境)への山行を計画した際、噴火警戒レベルが1(平常=当時)から2(火口周辺規制)に引き上げられ、目的地を変えたと聞いた。

 御嶽山は噴火の17日前に火山性地震が増加していたが、警戒レベルは1のままだった。純一さんは「息子は当然、登る前に警戒レベルを調べていただろう」。それだけに、引き上げられていれば火口周辺の立ち入りが規制され、英樹さんや同僚たちは噴火に巻き込まれていなかった―との思いが募る。

 原告に参加したのは、噴火災害から2年が経過しても国や県の責任がはっきりせず、「社会の中で検証するべきだ」と考えるようになったからという。妻も「警戒レベル1ではなく『火山性地震が増えている』とだけ聞いたら慎重な英樹は登らなかっただろう」と当時の情報伝達の在り方に疑問を投げ掛ける。

 寺の住職でもある純一さんは毎朝、檀(だん)信徒のために本堂で経を唱える。その間、本尊の前に置いた英樹さんの遺影を見て、収容された時の英樹さんの顔が頭に浮かぶという。「犠牲者のためにも、国、県、地元自治体の火山防災の仕組みが問われ、悲劇を繰り返さない社会になってほしい」と望んでいる。

2017年1月25日掲載