TOP2017年01月訴訟で検証、減災に 提訴の遺族強調
記者会見に臨んだ伊藤ひろ美さん(左)と堀口純一さん=25日、松本市

 2014年9月の御嶽山噴火災害で、気象庁が噴火警戒レベルの引き上げを怠ったなどとして、国家賠償法に基づき国と県に損害賠償を求める訴訟を地裁松本支部に起こした遺族と弁護団は25日午後、松本市内で記者会見を開いた。訴訟を通じて、火山災害を検証して減災につなげたいと強調した。

 県内外の5遺族11人が提訴した。県弁護士会松本在住会館であった記者会見で、長男の英樹さん=当時(37)=を亡くした岡山県赤磐市の堀口純一さん(70)は当時の国や県の対応について「裁判を通じて検証し、真相を明らかにしてほしい」と話した。

 夫の保男さん(54)を亡くした東御市の伊藤ひろ美さん(55)も「どうして大惨事になったのか、なぜ減災すらできなかったのか、きちんと検証してもらいたい」。県の地震計が故障していたことには、「大事な頂上の地震計が観測できていれば、レベル2に上げる機運は高まったはずだ」と述べた。

 弁護団事務局長の山下潤弁護士(上田市)は「(事前の火山性地震の数が)レベルを2に上げるべき客観的な基準に明白に該当していたのに、なぜ上げなかったのか合理的な説明を問いたい」とした。今後、ほかの遺族や被災者に訴訟への参加を呼び掛けていくとしている。

 気象庁総務課は「現時点で訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただきます」とした。阿部守一知事は「訴状が届いていないので、現段階で具体的にコメントすることはできない」とした上で「遺族の思いに寄り添えるよう、引き続き火山防災対策の強化に全力で取り組む」とした。

 訴状によると、噴火した14年9月27日の17日前の同10日に52回、翌11日に85回の火山性地震を観測。同庁はレベルを1から2に引き上げる基準の一つを、火山性地震が「1日50回以上」としていたが、山頂一帯が立ち入り規制されるレベル2への引き上げを怠り、一帯の登山者が犠牲になったと指摘。遅くとも同12日早朝に引き上げる義務があったと主張している。

 県木曽建設事務所(木曽郡木曽町)は07年に気象庁と協定を結び、御嶽山の火山活動の一部を適切に観測する義務を負ったが、山頂付近と滝越(同郡王滝村)の2地点に設けた地震計の故障を知りながら1年余り放置し、観測を怠った―と指摘。地震計が機能し、精度の高い観測ができていれば、レベル2に引き上げることができたとしている。

 噴火災害は犠牲者58人、行方不明者5人を出した。いずれも登山者だった。

2017年1月26日掲載