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審査結果

 写真と俳句を組み合わせる作品「フォト×俳句」を公募した全国大会「第6回全国フォト×俳句選手権」(信濃毎日新聞社主催)は、11月9日に審査を行い、グランプリは、大分市の会社員佐藤信彦さんが初めて受賞しました。
 今回は、写真と俳句とも自作の「自由題の部」に絞り募集しました。昨年まであった写真と俳句のいずれかを出題する課題の部を無くしました。自由題の部としては応募者、点数とも過去最多の258人から797点が寄せられました。昨年の自由題の部より、71人、267点の増となりました。
 応募作品のうち、「ジュニア部門」の審査対象にもなる高校生以下の作品は県内外の35人が計74点を応募。ジュニアグランプリには、伊那市の中学1年溝口桃子さんが選ばれました。

【審査の方法】

 審査員は、写真家の中谷吉隆さん、俳人の坊城俊樹さん、俳人の神野紗希さん(ジュニア部門担当)の3人が務め、11月9日に都内で審査をしました。
 応募者の名前や年齢などはふせて、作品だけを見て各賞を選考。グランプリは、高校生以下の作品も混ぜて審査しました。その後で、高校生以下の作品はジュニア部門を優先して入賞・入選を決めました。

一般の部

グランプリ

佐藤信彦さん 大分県大分市

準グランプリ

酒井和平さん 石川県金沢市

フォトコン賞

相沢 功さん 福島県福島市

ニコン賞

川上幹雄さん 長野県長野市

滝沢康幸さん 長野県須坂市



中谷賞

池田正子さん 千葉県千葉市

坊城賞

宗澤美子さん 福岡県芦屋町



入選

こぐまじゅんこさん 岡山県倉敷市

河野公世さん 東京都新宿区

柴田貴美子さん 神奈川県横浜市

仲俣一重さん 長野県飯綱町

田中克佳さん 滋賀県大津市

遠藤美波子さん 長野県安曇野市

高橋春子さん 北海道函館市

土屋春雄さん 長野県御代田町

大橋志ほこさん 栃木県さくら市

根笹貴之さん 長野県佐久市



佳作

あと一歩己励まし汗流す

東嶌賀代子さん 長野県須坂市

マシン油の鈍く輝く残暑かな

杉本裕さん 長野県山ノ内町

初恋の鼓動聞こえり春の色

道信猛夫さん 東京都江東区

足を止め掛軸として夏滝を見る

石川元之さん 埼玉県小川町

二人には祭囃子もうわのそら

福本丈夫さん 長野県軽井沢町

唇に潮の香かすか九月尽

荻原宏祐さん 長野県長野市

たとう紙に祖母の筆跡土用干し

田辺紀子さん 大分県大分市

ヒロインは泡となりゆく春時雨

有谷久美子さん 広島県東広島市

また春が来るねと母の独り言

川崎彰典さん 埼玉県美里町

萩の風小さき嘘を見つけられ

栗原和子さん 東京都杉並区



審査員の講評と感想

中谷吉隆さん(写真家)

 自由題の全国公募としては人数も応募数も過去最多となり大変良かった。 内容は、バラエティーに富み、情を感じさせる視点も目立った。上位作品には写真と句のコラボレーションがいいものがたくさんあり、選考に苦労した。
 私は選考する時、まず写真を見て、どんな俳句を付けたのかを見る。 写真と俳句の掛け算がもう一つのストーリーを作り上げる。それがフォト×俳句の醍醐味。 漠然とした撮り方、目に留まらない写真では、いい句が付いてもコラボレーションにならない。
 全体には写真がしっかりしてきたなとの印象を受けた。選外となった人は自分の写真はどうか、見直してほしい。
 6回を重ね、入賞者が常連ばかりでなく、多くの新しい名前が増えたことは、さらなる広がりへ期待ができる。

▽グランプリ評

 木の根が岩をわしづかみにし、地に入り込む。老夫婦は冬の寒さに手を握り合い頰を緩ます。大自然の生命力に人間の世界を重ね、地球スケールのドラマを生み出した。

▽準グランプリ評

 降る雪にピントを合わせて人物をぼかし、人が絶えた感じを見事に表した。傘にさらさらと降る雪の音が、「雪国」(川端康成)の芸者駒子の囁(ささや)く声とだぶってくる。

坊城俊樹さん(俳人)

 今回は、抽象的な作品より具体的で分かりやすい作品が目立った。 前回グランプリ作品が、水滴の中に映り込んだ光景を捉えた幻想的な作品だったことに感化されてか、同じ傾向のものもあったが、具体的で物語があるような作品にいいものがあった。
 写真は、入賞した作品はかなりのレベル。俳句は全体的にもう一歩という感じ。取り合わせはいいが、句単体として見た時に弱い気がして、惜しいと思う作品が多かった。 もっと句として「うならせる」ものがほしかった。言い過ぎているところを省略したり、推敲してほしい。
 「写高俳低」の状況だが、フォト×俳句としては非常に優秀なものが多かった。回を重ねてコラボレーションの意味を分かってこられた。確実に底上げされていると思う。

▽グランプリ評

 何百年もあるような木の根が岩を包み込む。この「手」が、岩を温めているよう。句は今この時を、写真は数百年の時を切り取っている。この対比が素晴らしい。

▽準グランプリ評

 孤独な男が雪の中を傘を差して歩く。句が孤独を具体的にあらわしているのに対し、写真はすべてが埋没したようで幻想的。曖昧模糊とした魅力が、句を象徴する。



自由題の部 高校生以下

ジュニアグランプリ

溝口桃子さん 長野県伊那市



ジュニア特別賞

宮﨑侑人さん 長野県信濃町

菊池智輝さん 愛媛県八幡浜市

ジュニア入選

柳原あいさん 長野県長野市

大平育歩さん 岐阜県大垣市

常田果鈴さん 長野県山ノ内町

中村 響さん 長野県千曲市



審査員の講評と感想

神野紗希さん(俳人)

 写真に捉えた風景は瞬間です。そこに、俳句という言葉で、思いや情景といった物語を与えることで、写真の2次元の世界を、3次元、4次元と立体的に立ち上げてゆくことができます。 写真には直接映っていない、ファインダーの外の空間や時間まで感じさせてくれる作品が、たくさんありました。 作品のバリエーションがさらに豊かになっていて、選考は大変楽しい時間でした。

〈溝口桃子さん〉8月15日は終戦日、少年は遠い目をする祖父を見つめています。祖父も70年前は彼と同じ少年でした。写真の古いラジオで、玉音放送を聞いたのでしょうか。背景の草木の眩しさが、この70年の光陰を思わせます。

〈宮崎侑人さん〉「とばす」に部活動へ通う躍動感が出ています。写真の抑えた色調も露に冷えた秋のかげりを伝えてくれます。
〈菊池智輝さん〉「夜食」が秋の季語です。駅長さんの日常を垣間見た楽しい句で「斜めに」がリアルな描写です。写真には駅長さんが映っていないからこそ、どんな様子で夜食を食べていたのか、想像が広がりますね。
〈柳原あいさん〉空に散らばる白雲を、渡ってきた鶴の羽に見立て、鶴の命の躍動を捉えました。
〈大平育歩さん〉空間、時間に奥行きのある良い写真ですね。隠れて見えない腰の丸さを言葉で添えて、おばあさんの円熟した人生をも思わせます。
〈常田果鈴さん〉「言えぬ想い」の激しさを写真が代弁しています。この想いは、とても抑えきれそうにありません。
〈中村響さん〉モノトーンの写真に、言葉で曼珠沙華の赤を夢想させ、ここにはないものへの思いを駆り立てる作品になりました。