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獣害 動物で対抗―家畜放し飼い、見回りも  県内各地で試み
(2009年11月30日掲載) 
 

毎朝、リンゴ畑や山際を30分ほど見回りする北海道犬。「常に犬のにおいを残しているのも効果があるのでは」と、飼い主の酒井健さん=伊那市西春近





牛2頭が放牧されていた木祖村の荒廃農地。ススキが茂る手前や奥に比べ、放牧地(中央)は緑色の草が生えている=木祖村菅
 

山際の荒廃農地に放たれた豚。雑草は一掃され、猿やイノシシが近寄りにくくなった=山ノ内町夜間瀬横倉



荒廃農地を動き回るヤギ。天気の良い週末は近くの大洞高原で、人に慣れるよう訓練されている=小川村成就



ハイイロオオカミの尿を自宅裏の木につるす土肥敏夫さん。穴の開いた容器に10ミリリットルずつ入れ、3〜6メートル間隔で枝や棒にくくり付ける=安曇野市穂高有明

 獣害対策は獣で−。イノシシ、猿、熊など野生動物による農作物の食害や人への被害を防ごうと、家畜などを利用する試みが県内各地で行われている。

 下高井郡山ノ内町夜間瀬横倉の住民でつくる横倉環境整備組合は、9月から3カ月近く、山際の荒廃農地26アールで豚約50匹を放し飼いにし、雑草を一掃した。池田進次組合長(51)は「農地に戻すつもりなので、土を掘り起こしてくれる豚を放した。見通しが良くなり、豚は鳴き声も大きいので猿やイノシシが近寄らなくなった」と効果を話す。

 2年前から「牛の舌草(したくさ)刈り」事業に取り組んでいる木曽郡木祖村。今年は6月から3カ月間、2頭を菅地区に放牧した。ススキの原っぱになっていた農地がきれいになり、村によると、地区住民からのイノシシとシカの目撃や農業被害の届け出が3割ほど減った。

 上水内郡小川村では9月、村民有志約20人でつくる小川村山羊(やぎ)倶楽部(くらぶ)がヤギ6匹を成就(じょうじゅ)地区の荒れた農地に放した。農地再生や、乳を加工した食品の製造販売、観光振興が主な狙いだが、野生動物対策も期待。メンバーの湯浅昌謙(あつよし)さん(67)は「ヤギを人や車に慣れさせている段階だが、数年後には30匹まで増やし、もっと人目に付く場所に放したい」と言う。

 野生動物を追い払うために北海道犬を育成している伊那市。「追い払い実施者の会」の会員に1匹ずつ計11匹を預け、見回りをしてもらっている。会長で果樹農家の酒井健さん(75)=同市西春近=は「猿と出合うと犬が勇敢に追い、猿が出なくなった。助かっている」と効果を実感。市は1匹がカバーする地域を広げ、数も増やしたい、としている。

 農業関連資材卸販売の「長野味えさ販売」=松本市両島=はハイイロオオカミの尿を輸入、販売している。においが野生動物を遠ざけるという。自宅近くに出没する猿対策に、今年秋初めて購入した安曇野市穂高有明の土肥敏夫さん(61)は「安全で手軽に始められる。効果があれば人にも勧めたい」と期待していた。

[写真・文 太田一彰]
 
写真グラフ 信毎フロント

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