写真グラフ
 

信州製糸業の遺産を再利用  展示会場やホール 使って歴史を語り継ぐ
(2013年10月14日掲載)
 

<上田 旧常田館製糸場施設> 旧常田館製糸場施設の5階建て木造繭倉庫。現在、1階は絵画と詩の作品展の会場に=上田市




旧常田館製糸場施設の5階建ての木造繭倉庫は、幅が45メートルほどあり、大きな構えが目を引く





<茅野 かんてんぐら> 多目的ホールになった「かんてんぐら」。昭和初期に岡谷市にあった繭蔵を移築し、20年ほど前まで寒天の保管に使われていた=茅野市
 

<諏訪 片倉館> 岡谷市などで製糸工場を構えた片倉家が85年前に建てた温泉保養施設「片倉館」が、新たに公開することを決めた会館棟の階段。いまだ光沢を放つ手すりの左には重厚な金庫も見える=諏訪市



<岡谷蚕糸博物館> 近代化産業遺産に認定された岡谷市立岡谷蚕糸博物館の多条繰糸機。現在は建物の工事中でシートに覆われているが、開館後は本格的に糸取りをしたい人に使ってもらう方針だ




<須坂 ふれあい館まゆぐら> 明治期に建てられた繭蔵を移転した「ふれあい館まゆぐら」。1階には機織り体験コーナーがあり、地元ボランティアが織った草木染のマフラーなども販売している=須坂市

 かつて県内で栄えた製糸業の関連施設を、展示会会場や多目的ホールなど、さまざまな形で再利用する動きが広がっている。明治時代に造られた繭倉庫などは構造が頑丈なこともあって、現在でも使用可能。近年になって国の重要文化財に指定されたものもあり、関係者は産業遺産として後世へ語り継ごうと、新たな活用方法を模索している。

 2012年に重文指定された上田市常田の「旧常田館製糸場施設」。すでに公開していた事務所兼住宅と文庫蔵に加え、今春からは5階建ての繭倉庫2棟の公開を始めた。明治期に建造された木造の繭倉庫などでは9月下旬から、詩と絵を組み合わせた作品展を開いている。出展している画家の白井ゆみ枝さん(35)=同市真田町傍陽=は「(作品展で)歴史ある建物に多くの人が集い、上田を知ってもらいたい」と話す。

 09年に改装して多目的ホールになった「かんてんぐら」(茅野市宮川)は、岡谷市内にあった繭蔵がルーツ。製糸業が下火になった昭和初期に茅野市に移築し、20年ほど前まで寒天の保管場所として使われていた。柱の溝に沿って木の板を立てて重ね、壁にする技法「落とし板倉」で造った3階建てで外壁は土壁。1階はコンサートなどに、2階は展示場として活用している。

 須坂市須坂の「須坂市ふれあい館まゆぐら」も、明治期に建てられた同市内の3階建ての繭蔵を移転して、01年に交流施設として開館した。蔵の街並み歩きの観光客の無料休憩所になっているほか、館内では製糸業で使用した道具を展示し、機織り体験もできる。

 岡谷市立岡谷蚕糸博物館の高林千幸館長(62)は「歴史的な証拠物をきちんと後世に残して生かすことは、現代人の大事な役割」と話す。移転のため閉館中の同博物館も来年夏には開館する予定だ。

[写真・文 梅田拓朗、小西由紀]
 
写真グラフ 信毎フロント

掲載中の記事・写真・イラストの無断転用を禁じます。
Copyright© 信濃毎日新聞 The Shinano Mainichi Shimbun