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実践講座② 句完成後も写真を吟味

1月にスタートした実践講座(3カ月に1回掲載)の2回目です。今回はフォト×俳句に使う写真を中心に、選者の写真家中谷吉隆さんと俳人坊城俊樹さんが語り合いました。

【坊城】 フォト×俳句に使う写真についてですが、例えば、名のある彫刻家の作品を撮って俳句と組み合わせるのはありですか。

【中谷】 著作権の問題もあり、既に作品としてあるものをそのまま撮るのではなく、相当工夫して撮らないと作品づくりは難しい。被写体とした作品自体が面白いのであって、そのままの写真は、それを複写しただけのもの。つまり、自分でフォト×俳句を作ったことにはならないね。

【坊城】 写す場合でも、街中の風景の一部に使ったりして、被写体の作品とは違う、自分が言いたいことが写真に表現されていないといけないのですね。

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〈水温む弥生三月ここは何処〉
    (木島平村・幸野隆一さん)

【坊城】 この作品は、面白い被写体を使ってはいますが、雪の中からぽっかり出てきた感じが出ているからいいのかな。

【中谷】 俳句の「ここは何処(どこ)」との組み合わせがいい。惜しいのは...

【坊城】 季語が三つも重なっていることですね。「水温(ぬる)む」「弥生」「三月」。「啓蟄(けいちつ)」「蛇穴を出(い)づ」みたいな季語で一つにまとめればいいかな。写真と俳句の掛け合わせ方は、分かっていますね。

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<教え子の文目濃くして卒業す〉
    (埼玉県ふじみ野市・横田嘉男さん)

【中谷】 この「文目(あやめ」」というのが分かりにくいかな、と思ったが。

【坊城】 色調のことですね。人格というと大げさかもしれないが、人それぞれの「カラー」というか。句としては、普通は人の資質のことを「文目濃くして」とは使わないから面白い。

【中谷】 そう考えると、写真と俳句のつながりが分かってくる。

【坊城】 少し説明調というか、理屈っぽいというか、苦労して作られた作品という印象は受けますね。

【中谷】 横断歩道で、傘を差した集団を後ろから撮った写真だと、子どもの姿は見えなくても、あれこれ考えなくて、すっと理解できるんじゃないかな。

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〈梅寒し一輪咲いてそれつきり〉
    (佐賀県基山町・古庄たみ子さん)

【中谷】 入選にしようと思ったんですよ。今年の寒さが出ている。一輪だけポツンと咲いて、あとはつぼみのまま。それが「それつきり」でうまくうたわれている。

【坊城】 私も「それつきり」という言い方がいいと思います。ただ、梅をアップで撮っているので、句まで読んで初めて面白いと思う。

【中谷】 写真だけではイメージが膨らまないのが残念。

【坊城】 梅でない写真はどうでしょうか。寒々とした夕暮れの街を、女性が一人歩いているような。

【中谷】 そうだね。フォト×俳句を作った後も、これはどうかあれはどうかと写真をいろいろ入れ替えてみると、いい組み合わせが見つかってくる。

(2012年4月26日掲載)
 ※「実践講座」は概ね3カ月に一回載せます。

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【選者略歴】
中谷 吉隆(なかたに・よしたか)さん
写真家。1937年、広島市生まれ。ルポルタージュやスポーツなどの分野で活躍。写真コンテストの審査員も多数務める。日本写真家協会名誉会員。作品集に「ノーサイドの笛が鳴る」「神楽坂Story」など。東京在住。


坊城 俊樹(ぼうじょう・としき)さん
俳人。1957年、東京生まれ。俳誌「花鳥」主宰。日本伝統俳句協会常務理事・事務局長。曾祖父は高浜虚子。著書に句集「あめふらし」、「坊城俊樹の空飛ぶ俳句教室」など。東京在住。


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