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実践講座ワイド

 6月第5週の本欄は「実践講座ワイド」として、3~5月の応募作品の中から、選者の写真家中谷吉隆さんと俳人坊城俊樹さんに、4点の作品を選んで対談してもらいました。

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 <汝が技を千代に八千代に競馬>(京都府亀岡市・中立喜広さん)
 坊城  写真にいろんなものが写りすぎていて散漫な感じがする。
 中谷  写真ってまず何を言わんとするかということが大事だから、木馬で練習している子どもと本物の馬のお尻がちょっと写っている所がいい。左側の人物と上を切ると強調されて良くなる。
 坊城  馬と子どもがそれぞれ別の方を向いて、意味不明な感じが面白い。句はまことに結構。「くらべうま」として現代の競馬でなく、昔からの伝統を継承してほしいという思いを表現している。
 中谷 子どもだから良かった。もし練習しているのが専門家の大人だったら あまり面白くない。
 坊城 非常に惜しい。子どもと馬をクローズアップしておけば素晴らしい作品だ。優秀賞ですよ。

 <ガキ大将今は町長桜咲く>(千葉県柏市・渡会克男さん) 20160630-2.jpg

 坊城  句は悪くはないが、すごく良くもない。桜が咲くのは当たり前なので、句には「桜咲く」と付けない方がよろしいのではと思う。
 中谷  問題はテーブルに置かれた写真。写っているのががき大将で、この人物が町長になったと言わんとしていると思いますが、フォト×俳句の写真的面白さはそんなに出てこないんですよ。
 坊城  どうなんですか。写真の中の写真って。しかも丸々写真が入っているでしょ、この場合。
 中谷  コラボレーションの物語性としては安易だと思います。
 坊城  写真の一部だけならいいんでしょうか。写真を利用するということに安易さがあるのでしょうか。
 中谷うーん。フォト×俳句は写真の存在感も大きいですよね。その意味で、この句の写真は工夫がほしい。
 坊城 俳句としては嫌いではない。情がある。もうひとひねり、予定調和でない意外性があるといいですね。

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 <ひのふのみ手鞠(てまり)数えて風わたる>(岡谷市・花岡巻義さん)

 中谷 フォト×俳句は季語があり手鞠は新年。写真は満開のツツジ。手鞠のようにきれいに刈り込まれているが、ツツジは晩春の季語で初夏まで咲く。季語と違う写真の組み合わせは避けた方がいい。
 坊城 手鞠を季語として使わない方がいいんでしょうね。句の方を変えて例えば「母くれし手鞠数えて風薫る」と夏の季語で、昔もらった手鞠の思い出にしたらどうか。時代もさかのぼるし、深みが出る。写真はもっと凝縮したら。
 中谷 写真も俳句も省略ということをやるわけなので「邪魔物は殺せ」ですね。
坊城 フォト×俳句もそうですが、かき揚げ丼みたいなのが多い。天丼にしなさいと言っている。エビでもイカでも何でもかんでもごちゃごちゃ入れない。省略ですよね。でも省略が一番難しい。

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 <ジブン色未来へ放ち卒業す>(伊那市・溝口祐子さん)

 中谷 願い事を書いた風船が空に広がる。未来感があるが風船がよく見えない。
 坊城 初めタンポポの綿毛だと思った。よく見ると色が付いている。お若い作者だと思うんですよ。お若いから見えるけれど年配の人は見えない。
 中谷 個性豊かに育ってほしいと言わんとしている。その気持ちはいい。
坊城 それは素晴らしい。どちらかというと短詩系では良質な川柳に近い。それが俳句の方から見るとフォト✕川柳という感じ。ジブンがどうして片仮名なのか。現代的な効果、若者言葉的効果を狙っているのかもしれないが、あまり成功していない。句が軽薄になる。

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