
第5回中学生新聞スクラップ作品コンクール(信濃毎日新聞社、信濃毎日新聞販売店会主催)は、県内29校から828点の応募がありました。昨年より7校、218点増えました。事前審査を通過した106点を、切り口やまとめ方の分かりやすさなどを基準に審査しました。優秀賞10点、奨励賞20点、新たに設けた特別賞に4点を加えた計34点を選びました。ことしは3月の東日本大震災に関わる作品が多く寄せられました。被災地で起きていることそのものから、放射能汚染、節電といった私たちの暮らし方に直接関わるテーマまでその着眼点はさまざま。また、教育や農業を取り上げた作品もあり、10代の目を通して、いまの社会のありようが見えてきます。10月15日には長野市の信濃毎日新聞社で優秀賞受賞者の表彰式が行われました。
「江沢さんのひとくち講評」は、信濃毎日新聞社の江沢啓二・NIEアドバイザーが担当しました。
(受賞者名に併記した市町村名は学校の所在地です)
- 急激悪化!獣食害
伊那市・長谷中3年
酒井 省吾さん -
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自分の地域で深刻に
「希少種や環境問題に関心があり、自分が住む地域で深刻になっている野生鳥獣の食害をテーマにしました。被害の現状や対策などに分けて記事をまとめると、被害が急激に悪化していることが分かりました。食害を受けた高山植物の記事から、対策や保護の大切さを感じました」
急激悪化の文字に作者の危機感が表れています。コメントがしっかりしています。
- 長野県の学校の今
千曲市・戸倉上山田中3年
中村 沙羅さん -
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気になる学校の問題
「気になる記事を切り抜いていたら県短期大学の記事が多いことに気付き、他の学校はどうなっているのかと思い集めてみました。スクラップをして、不登校や学費が払えず大学に行けない人がいることが問題だと思いました。学費を気にすることなく行けるようにしてほしいです」
中学生が教育問題を真剣に考えている姿が新鮮です。「対策」に思いがにじんでいます。
- あなたはどう思う?脱原発社会実現をめざして
佐久市・野沢中2年
臼田 朋未さん -
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原発のない暮らしに
「以前は、原発は安全だと信じていたけれど、これからは自然エネルギーに変えていく必要があるのではないでしょうか。電力は必要ですが、唯一の被爆国として原発がなくても暮らせる社会を進めていくことが大切です。今後は自然エネルギーについてもっと調べてみたいです」
作者の考えが見出しに表れています。多角的な記事の分類が見出しにつながりました。
- 世界を揺るがす3.11東日本大震災
佐久市・臼田中1年
新海 秋奈さん -
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地震の記事多く大変
「小学校卒業間近で東日本大震災があり、ショックを受けたのでテーマにしました。毎日、地震に関係した記事が多くまとめるのが大変だったけれど、五つにカテゴリーを分けて見やすいように工夫しました。記事を読んで、今きちんと復興に向かって進んでいるのか疑問を持ちました」
東日本大震災が起きた3月11日を記録にとどめようとした作者の感性が光っています。
- 節電が日本を救う第一歩
飯田市・飯田東中2年
宮沢 茉夕さん -
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一人一人の意識大切
「福島第1原発の事故で節電が求められているので、企業の取り組みや節電対策の新製品などについてまとめました。私の家ではことしの夏、冷房を使わないといった節電に努めましたが、これからもっと節電対策をしていきたいです。国民一人一人の意識が大切なのだと思いました」
見出しの的確さと色合いが引きつけます。今後、自分がどう関わるかが分かります。
- 未来をつなぐリニア中央新幹線〜新たな希望〜
飯田市・飯田東中2年
宮沢 奈々さん -
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飯田の街に活気出る
「リニア中央新幹線の仕組みや中間駅をめぐる住民の反響などをまとめました。リニアの駅が飯田にできれば、飯田の街が明るくなり、活気が出ると思います。地域の未来にとって大切なことなので関心を持ってほしいです。これからもリニアの動きに注目していきたいです」
地元の期待が伝わる作品です。期待とともに、課題もしっかりと捉えています。
- 大関魁皇 相撲人生に悔いはなし
飯田市・飯田東中3年
木下 佳歩さん -
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歩み残そうと思った
「魁皇の積極的に攻める相撲が好きで、引退すると知ったとき、相撲人生の歩みを残そうと思いました。外国人力士に勢いがある中、日本にもすごい力士がいたことを知ってほしいです。妥協せずに相撲と向き合ってきた魁皇。私も常に自分に厳しく物事に取り組んでいきたいです」
引退した魁皇関に惜しみない拍手を贈る温かい心が伝わります。コメントが丁寧です。
- あなたはどう考える風評被害
小布施町・小布施中2年
春原 梨華さん -
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正しい知識を持とう
「野菜を出荷できず困っている福島県の農家の姿をテレビで見て、初めて風評被害という言葉を知りました。記事を集めながら、放射能を心配する人と、被災地を応援したいという人の両方の気持ちが分かりました。難しい問題だけれど、正しい知識を持つことが大事だと感じました」
記事は6点しかありませんが、現状を見極め、しっかりとした考えが伝わってきます。
- 日本がゆれた〜長野にも迫る恐怖〜
長野市・東部中3年
荒井 陽花さん、山口 瞳さん -
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身近な問題伝えたい
「東日本大震災は今年の大きな出来事です。栄村でも松本市でも地震があり、身近な問題だということを伝えたかったです」(荒井さん)
絶対に「くじけない」
「『くじけない』という力を与える言葉を絶対に入れたかったです。スクラップを通じ、地震への備えが大切だと気付きました」(山口さん)
東日本大震災と県内で起きた地震を並べ、復興を応援する作者の思いが伝わります。
- 日本の農業が危ない
佐久市・佐久長聖中3年
樫山 拓斗さん -
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「TPP」がきっかけ
「祖母が農家で、TPP(環太平洋連携協定)という言葉をよく目にしたので農業について調べました。記事は棚田のイメージでまとめ、カモやカエルのイラストを付けました。外国には食べ物がなくて困っている人もいます。日本はもっと農業をしやすい仕組みが整えば良いと思いました」
農業の記事を幅広く集め、課題を洗い出し、振興策も考える思いが心強いです。


「訴える中身」「分かりやすさ」ポイント
信濃毎日新聞社 NIEアドバイザー 江沢 啓二さん
新聞スクラップ作品は、「いくつかの記事を貼って、自分の思いを表す新聞」です。各家庭に配られる新聞は、記事の「訴える中身がはっきり」しており、「読む人のために分かりやすく」表しています。同じ新聞ですから、選考はこの観点から行いました。
まず、「訴える中身がはっきり」しているかです。中身は見出しに表れます。例えば、今回の多く見られた「東日本大震災」をテーマにした作品。記事を集める中で震災に対する考えを深め、自分の思いが表れた見出しを作れたかがポイントです。
優秀賞の作品では、「あなたはどう思う?脱原発社会実現をめざして」「節電が日本を救う第一歩」といった見出しがありました。震災をきっかけに、日本がどのような道を進むべきかという作者の思いがよく表れています。
震災の他、大相撲の魁皇関やサッカー女子日本代表なでしこジャパンへの応援、節電や環境保護への提言がありました。中学生の温かい心が見え、真面目でひた向きな思いが感じられました。
2番目は「読む人のために分かりやすく」表しているかです。そのためには、集めた記事を小テーマに沿って分類し、整理して模造紙に貼ることが大切です。優秀賞作品はそれが際立っており、読む人を引きつけました。さらに、文字の美しさや色合いも見事でした。
優秀賞作品は、2つの観点が融合し、訴えたいことがコメントに表れていました。
本年度は初めて、特別賞を選びました。いずれも、未完成の面はありますが、訴える力の大きい作品でした。