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今年の新そば

12月
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 今年のソバ栽培の出来に関しては、なぜか、ニュースが少なかった。

 最初に北海道の農地が時ならぬ台風に何度も襲われて、一部の農産物がかなり減収になった、と大きく報道された。ソバも相当な被害が出たようだ、と伝えられ、心配したのだが。北海道全体の収穫量がどうだったのか、あまり新聞等にも出てこなかったようである。

 本州では、また長野県でどうだったかについては、わずかに、出来がよくないようだ、という伝聞はあった。山間地のそば屋では、近所から玄ソバを仕入れることが多いので、出来については真剣である。たまに聞いてみると、量を確保するのがむずかしい、と嘆く声が多かった。つまりは不作傾向らしかった。(数量の市町村ごとの統計数字は、だいぶ後になってまとめられる)。

 味の方はどうか。食べ歩いた結果では、かなりバラツキがあった。ぐんと旨い店もあれば、これが新そばなの?とびっくりするほど落ちる味もあった。

 味はよくないが、何とか合格点か、という味にも出会った。新そばらしい粘りがある麺には、時々当たって、半分安心したりした。

 こういう蕎麦は、おそらく、打つ職人はよくわかるのではないか。伸びがいい、香りが立つ、など新そば特有の良さが、打っていてはっきり手応えを感じるだろう。

 しかしなぜか、食べる段になって、最初の強い風味、口の中で香り立つ旨さ、などは、かなり減じる場合があるような気がする。打つ(提供する)側と、食べる側とのズレがあるのかなあ、と感じたそば屋がかなり目立った印象である。

     ☆

 今年の特色、傾向を振り返れば...

 NHKの大河ドラマ「真田丸」ブームで、上田や長野市松代などに観光客が大いに増えた。いや、長野県全体がにぎわったと言えそうだ。そして人気観光地で食べ物といえば、信州そばが圧倒的だったようである。多くのそば屋が、昼時に行列になったりして、大いにうるおったはずである。

 ただし、上田のドラマ館などの入場者数は、大型バスで繰り込む団体客が稼いでいた。そうしたバスが向かうそば屋は、郊外のレストラン、大型のそば屋で、その蕎麦の味がどうだったかは、かなり心配するのだが、確かめることはむずかしい。

 地元住民が日常で楽しむ蕎麦の味と、観光客が雑誌やインターネットなどで得る情報とでは、相当に開き(ズレ?)があるような気がするのだが、実態はつかみにくい...。

 長野県推奨の「信州ひすいそば」の普及がようやく県民の間に広まってきたようである。各地のイベントに登場するようになり、そば屋・レストランなどでも時々見られた。味の方は、時々、たいへん美味しいものに出会うことが出来た。それでもまだ、素材の良さを生かす工夫が、調理の現場でもっと欲しいように感じるが...。

 今年も、市町村ごとの蕎麦産地売り出しの動きが多かった。部分的に成功した例もあるが、どこかで、本当の「そば処」に成長しないまま、宣伝やイベントのもの珍しさに頼った例が目立ったような気がする。材料の良さを生かすこと、その技術を磨くことは、もっと進化させて欲しい、と願う。

 ほかに、毎年のことだが、新規にオープンしたそば屋がかなりあった。一方で、ひっそりと閉める店もあった。そば屋全体は、増えているのだろうが...。

 12月はなぜか、蕎麦の話題は比較的多い方である。年越し蕎麦が習慣で広まっているせいだろう。信州では年越しだけでなく、正月に蕎麦を楽しむ伝統が各地にあったという。そうした風習も含めて、年末年始、蕎麦に親しむのもいいもの。

 新そばの旨さだけで言えば、これからの寒い時期、1月とか2月になって、いちばんはっきりわかる、というそば屋もある。そんな時期の、美味しい蕎麦を、それなりに楽しみにしたい。

 1年間のご愛読、ありがとうございました。

 よきお歳を、美味しい年越し蕎麦をお迎えください。

2016年12月27日掲載

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