TOP2017年02月冬のそば祭り

冬のそば祭り

2月
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 今冬は、寒さの中の「そば祭り」が妙に多くなったような気がした。

 そば屋は、冬場の売り上げの落ち込み=冬枯れが目立つので、その回復をはかる目的だろうか。新聞などに取り上げられることがあり、盛り上がっているのかどうか、いくつかのぞいてみた。

 まず、広い範囲で始まったらしい「信州そば検定」。主催は長野県そば商生活衛生同業組合(そば商組合)。パンフによれば、「県下の各店舗で《そば道修行手形》を集めよう。」とある。期間は12月29日~2月3日。「...加盟の県下各地のお店でそばを注文いただくと、希望者にもれなく《そば道修行手形》を発行。...」などとも記す。参加店は、一覧表では、長野市を中心にしたおよそ80店ほどらしい。「手形」というのは、信州そばを全国各地に広めた五人の「SOBA武将」が描かれたカードだ。店によって、2種類を置いてあるという。3軒まわれば5枚が集まるわけ。

 気がつくのが遅かったが、あそこはやっているだろうな、という長野市内の有名店へ食べに行ったら、割とすいていた。勘定の時に、武将カードは?と聞いたら、思い出したように、あります、と分厚い束を出してきてくれた、2枚もらった。もう終りの時期だったのに、たくさん余っているらしかった。積極的に配ることはしなかったのかしらん...。

 別の老舗にも顔を出してみた。勘定の時に聞いたら、レジ係はキョトンとしている。意味がわからなかったらしい。武将のカードを配布しているんじゃないの?と改めて聞くと、そうか、とパンフを出してきて、いえ、うちはやっていません、と言う。あれまあ、やってない店もあるんだ...。

 パンフでは、どこの店がカードをくれるのか、よくわからない。名簿だけはぎっしり書いてあったのだが。不思議なイベントだった。「其ノ二」として、「信州そば検定」を実施するという。「"そば道"修行の最高峰は信州そばリエ」と書いてあるので、試験などをやって称号を授与する計画があるのだろうか。東京では「江戸ソバリエ」なるものがあって、盛んらしい。そのマネだろうか、ずいぶん前に「信州ソバリエ」を作って宣伝するグループがあったが、あれはどうなったのだろう...。

     ☆

 戸隠では2種類のイベントが併行していた。大きくは冬の戸隠観光のキャンペーンで、「おら家の逸品」を共同で宣伝し、利用者にサービスをする、というものらしい。いくつもの企画があるが、蕎麦関係では、「冬蕎麦 半ざる食べ歩き手形」1月21日~3月5日、「節分そば」1月27日~2月3日である。両方とも「戸隠神雪詣り寒熟旨味そば」が売り物のようだった。

「節分そば」は、参加店一覧は、パンフレットが無くて、どこへ行くか、とまどった。思い出して、インターネットで調べてみたら、参加は10店舗だという。節分らしく長芋の「とろろ」を使う特別メニューを提供する店が多かった。値段も少し高めにしてあるよう。どこか1カ所、食べてみれば様子がわかる。そう思って食べてみた。たまたま、蕎麦が割と美味しかった、そしてトロロの風味に負けていないのがありがたかった。日時がなかったので、この1軒だけにした。

 ...そういえば、昨年も「冬の陣」ということで、この時期に出かけてみたのだった。値段の高いメニューばかりで、蕎麦自体は変わりない。味だけでなく、割引きとかサービスつきが、ちっとも徹底してなくてがっくり来たのを思い出した。観光情報センターで聞いたら、イベント自体をよく知らなかったのは、今年も同じ。何のためのイベントか、単に戸隠そばの名声を落としているだけだったか...。

 ついで、「冬そば半ざる食べ歩き手形」を試みた。4枚1つづり2000円の「手形」を先に買う。その1枚500円で、「半ざるそば」が食べられる、というもの。観光情報センターで聞いたら、開いている店を教えてくれた。その1軒を訪ねたら、休みだった、がっかり。こうした食い違いは、戸隠ではよくあることだったが。

 雪道を引き返し、別の店に入った。半ざるそばを注文する、先に手形(500円券)を渡してからだった。出てきた蕎麦は、竹ザルの真ん中にうっすらと、三つに畳んだ状態、つまり3ボッチだった。麺が妙に細い、小さい。今までの「戸隠そば」とはえらく様子が違っていてびっくりした。つい、店のメニューを見てしまう。ざるそばが800円だという。その半分がこの500円手形か、すごいなあ、と感心した。味わうなどというより、ありがたく頂戴するしかないか、と思った。

     ☆

 松本市奈川では、この時期、「奈川寒中とうじそばまつり」が開かれた。期間は2月5日~12日に、奈川地区の3店舗で、名物の「雉(キジ)とうじそば」を提供する、というもの。

 「とうじそば」は、奈川では「投汁(とうじ)そば」とも書く。ゆでて小さい玉状にしてとっておいた蕎麦を、食べる時にトウジカゴという小型の籠に入れ、具だくさんの汁の中で温め、具も一緒にお椀に盛って食べる、何杯もおかわりをして、という食べ方。もともとは長野県じゅうにあったと思われるが、今は各地で小規模に食べるだけのようだ。奈川では早くから商品化していて、今では奈川の名物料理として名を上げている。だんだん有名になり、松本市街地にも広がりを見せている。長野県内では長野市などでも出す店がある。

 新聞記事などによれば、冬の間は、スキー客は来るが、蕎麦を目当ての客はぐんと少ないらしい。それで、スキーに来たらどうぞ、あるいはこの「とうじそば」を目当てに観光客が来て欲しい、という願望を込めて、イベントにしたという。

 「とうじそば」は、イロリのあった時代に、大鍋を囲んで家族が集まって食べるのにふさわしい食べ方でもあった。そのためか、こうしたイベントの時には、2人以上とか4人が向いている、などとも言われる。人数がそろえば、このイベント以外の日でも注文を受けてくれるだろう。

 いったんゆでて冷ましておいた蕎麦を、熱い汁の中で温める。ゆでたてでない蕎麦ながら、当たると実に美味しいものだ。体も温まる、冬場に向いた食べ方だ。

 こうした温かい蕎麦は、たとえば飯山市の雪の「かまくら」の中で出してくれるイベントもあったという。信州らしい、冬の蕎麦の食べ方として、もっと広まっていいのかもしれない。

     ☆

 今年の「門前そば」。「善光寺灯明まつり」の期間中、2月11日~19日の間に、善光寺門前の11店のそば屋が、半ざる・半かけそばを400円で提供する、というもの。毎年の恒例行事である。

 早目にいくつもの店を食べ歩いてみた。少し不思議なことがあって気になった。

 まず、参加店が1つ減ったこと。以前はたしか13店くらいあったような気がするが、そのうち1つ減って12店が長いこと続いた。それが今年は11店になったのだという。...もしかしたら、この半ざる食べ歩きのイベントに陰りが出てきたのだろうか。そういえば去年は、食べ歩く客が少し減った、と知り合いに聞いたっけ...。全店を食べ歩いた人に出す記念品は、すぐ終わってしまうという状態ではなかったと聞いた。往年の人気が衰えたのだろうか...。

 そのことと関係あるのかどうか―最初にまわった3軒の蕎麦は、意外に美味しかった。これらの店が以前からこの味を出していれば、相当にほめられて、客もついているはずだろうが...と不審に思った。もしかしたら、人気を挽回するために、蕎麦の質を上げたのだろうか...。それなら、たいへん喜ばしいこと、と期待がふくらんだ。

 ところが、次に入った店の蕎麦がひどい味で参った。半ざるそばだから、普通のざるそばの半分の量ということだろうが、それがスムースに喉に入っていかない。やっとのことで食べ終えた。ふだん家でゆでて食べる乾麺よりも落ちる麺。とてもそば屋の商品とは思えない...。

 こういう蕎麦を出す店が2~3店あれば、全店食べ歩きはたいへんしんどくなる。もうやめた、という「物好き」(ファン)も出てくるに違いない。

 毎年のことだが、初日にはどこのそば屋もよく客が入っていた。慣れた猛者は、1日で全部を食べてしまうという。当然のことながら、全店制覇の記念品(今年は箸)をもらえるわけである。蕎麦を味わうというより、元気よく食べ歩くのが立派というか、見事なもので...。誰が一番乗りするか、というバトルが、一部のマニアできそわれている、と聞いたこともある。

 そして、最初の2~3日の混雑の後は、平日など、ぐんと客が減るようだ。願わくば、どの店も、「お、この店、おいしじゃないか、こんど改めてゆっくり食べに来よう」という呼び水になって欲しいものである。

     ☆

 総じて、冬場のそば祭りは、あまり華やかには展開されないようである。信州らしい、大きな特色ある冬のメニューが、広く普及すると楽しいのだが、これからの課題だろう。

2017年2月15日掲載

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