TOP2017年09月ソバ花満開

ソバ花満開

9月
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 8月末ころになって、県下各地のソバの花があちこちから紹介されるようになった。一方で、地域起こしの素材として、種蒔きをした、という記事も見かけた。どうやら、秋ソバの種蒔きの時期が、相当に幅が広がったらしい、と感じた。それで気になって、晴れた日をねらって、北信のいくつかのそば処の畑を見に行った。

 話の前段として、7月末に中信地方の山村へ出かけた時に、遠くに白いソバ畑を見かけて、夏ソバかしら、と気になった。近くへ行ったら、もうすぐ刈り入れになりそうな畑も見かけた。...そういえば、このムラは夏ソバを売り出している、それでもうじき収穫して、早めの「新そば」を提供するのだな、とわかった。以前から、種蒔きの時期が相当に幅があるのだった。

 そんな傾向が、秋ソバにも広がってきたらしい。全体にどこでも、種蒔きの時期が早まっている...。

     ☆

 9月初旬、戸隠の高原地帯では、真っ白い花が咲いていた。この白さは、咲き始めた時期のもの。清楚な雰囲気が強い。ごくたまに見かける赤い粒は、ツボミの一部で、花が開くと見えなくなる。実って出来る赤い粒は、「とうろう」などと呼ばれるが、これはまだ見かけなかった。

 だいぶ以前に聞いた話で、8月のお盆過ぎに種蒔きをしたという農家がかなりあったらしい。また、「戸隠そば祭り」が開かれていた秋分の日ころに満開だったという。全体にずいぶん早い栽培になっている。それでも8月末に種蒔きをしたという新聞記事も見かけた、まだ、かなりの開きがあるらしい。

 今回は、どこでも花はきれいに咲きそろっていた。初期なので背丈があまり高くない、稔りもまだだった。雨風に倒れた様子がほとんど見えない。今後の天候でどう変わっていくかはわからないが。最近の傾向で、蜂(ミツバチ、マルハナバチ等)の羽音がほとんど聞こえない。小さな虫が舞っているのはわかったが。...そのせいだろうか、ソバ花特有のかすかな香りが、風下に立つとにおってくる。あれ、今年もか、とびっくりした。あちこちの畑のうち、半分くらいで感じたことである。まだしばらくは、満開の花がたっぷり見られそうだ。

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 ついで信濃町の黒姫山麓へまわる。ソバ栽培は相変わらず、開拓地、水田転作など相当な広がりがある。一部にはまだ幼い芽が出始めたばかりの畑も見かけたが、ほとんどの畑で花はきれいに咲きそろっていた。まだ「とうろう」が見えない時期がほとんどだったが。たまに、いくらか早く種蒔きしたのだろう、既に「とうろう」が出来てきた畑も見かけた。

 信濃町は、農水省の統計によれば、ソバの栽培面積は平成27年で251ha、28年で245haと、県下でも有数の産地。収穫量も100t前後である。こんなに多くの栽培がある信濃町でも、地元の粉が足りなくなったのか、たまたま寄った一部のそば屋で、少し味が落ちた蕎麦を提供していた、あれまあ、というところ。そして印象としては、ソバ畑全体でもどこか、栽培に勢いが落ちてきたか、と感じた。何年も天候不順が続いた、と嘆く農家の声を聞いたことがある。今後の好天に期待したい。

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 早くも秋のそば祭りが始まった。その最初になろうか、山ノ内町の須賀川で、恒例の「法印さんとそばの花祭り」が9月9日~10日に開かれる、と聞いて、出かけてみた。会場の八丁原はいつものように広大なソバ畑が続く。見物人もそこそこに来ていてにぎわっていた。

 花より団子、とばかりに、まず最初に蕎麦を食べる。少し太め、少し色黒の蕎麦は、けっこう美味しかった。本来は端境期でソバ粉の品質が落ちる時期。それなのに、かなりいい味を出していたのに感心した。この地方名物の「はやそば」もまずまずの味。そばがきに似た食べ方なので、粉の味が直接出るはず。保管がよかったのだろうか。「雪室」を作ったらしいので、その効果もあったか。

 花を見る。一部で育ちが不ぞろいだったが、ほぼ満開に近い開花状況だった。近づくと、蜂だろうか、小さい羽音が聞こえる。目をこらしても、ミツバチ類は見えなかったが。蜂にも食事時間があるらしいから、ずれてしまったのか。時折り吹く風に、花の香りがプンとにおった。

 斜面の畑の他、水田転作らしいソバ畑も、大きく育った木が倒れもしないで風にそよいでいた。1mほどに伸びたヤマゴボウ(オヤマボクチ)がたくさんの花をつけていた。この地方特有の、そば切りのツナギに使うもの、時々栽培しているのを見かける。ここでも、種を蒔いて、苗を畑に植えて育てるのだろうか。マルチをかけて育てる畑は、北信濃の各地で見られる...。

 帰りがけに、主催者のメンバーに、去年はダメだったけど、今年のはかなり旨かったよ、と感想を言った。毎度のことだが、フン、それがどうした、という顔に見えた。どこのそば祭りもそうだが、批評、批判めいたことを感想で言うと、ほとんどがきつい顔をして、にらまれる。誉めるだけだったらいいのだろうが...。がんばっていい味を作り、ニコニコとうれしそうに提供すれば、黙っていても客が増えるだろうに。...つい、妙な感想を持ってしまった。

 不思議なことに、県下のソバ花のイベントでは、花は景色で見せるだけ、食べるのはとってつけたような味と解説がほとんどだ。須賀川でも似たようなもので、花への関心は誰も持たないようだった。それでも、肝心の蕎麦の味がいいのは、たいへん貴重な、珍しいイベントである。

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 飯山では、大きなそば畑が広がる鍋倉高原の畑へ行ってみた。大規模な農地開墾をした場所で、一時はソバ栽培が盛んだった。今も広いソバ畑が広がっているが、規模は減ってきたような気がする。最近は圧倒的にアスパラ畑が拡大してきた。

 今年もかなりの面積がソバ畑。花は満開の初期で、真っ白だった。遠くに黒姫山などが見える、見晴らしのいい地域だが、やはりミツバチ類はほとんど見えない。それでも、逆光にトンボの羽根がキラキラ光って、きれいだった。小さい虫がたくさん集まって来るのだろうか。やはり風下に立つと、花の香りがプンとした。

 ここでは1枚ずつの畑が広いので、大幅に機械化が進んでいることと思う。先進的な栽培技術も積み重ねられているに違いない。可能ならば、アスパラよりも売り上げがよくなるようなソバ栽培が確立されて、広大な産地形成ができるとうれしいなあ、と思った。

 帰りに、近くの集落の畑で見かけたソバ畑。かなり広い面積に、蒔いて芽が出たばかりのソバが並んでいた。こんなに遅い芽出しで、霜が来る前の収穫に間に合うだろうか、と気になった。雨に少しくぼんだらしい場所もあった、遅くになって改めて蒔き直しでもしたのだろうか。花が一斉に咲くのが望ましいのか、危険を避けるためにわざとずらして栽培することもあるのか...。それぞれの土地に、それぞれの事情がいくつもあるのだろう。ソバの稔りは、今後の気候にも大きく左右される。順調に収穫できて、豊作で美味しいソバになって欲しいと願わずにはいられなかった。

2017年9月13日掲載

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