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2010 長野県知事選

知事選候補者に出された公開質問状。候補の考えを知ろうとする市民団体などからのアプローチが活発だ

 今知事選で、立候補者を招いて直接話を聞いたり、質問状で考えを尋ねたりする動きが相次いでいる。10年ぶりに新人だけの争いとなり、各候補の人柄、政策などを直接確かめたい-との思いが県民側には強いとみられる。元副知事の阿部守一氏(49)、前安曇野ちひろ美術館長の松本猛氏(59)、前副知事の腰原愛正氏(63)の3新人の陣営にとっても、知名度を高め、政策を浸透させることは大きな課題。県民側の求めに応じて接点を持つことも大切な戦略と位置付けているようだ。
<有権者 候補招き対話 質問状も>
 「精神保健福祉への見解を聞きたい」。知事選告示日の22日、精神障害者らでつくる市民団体が候補3人にA4判3枚の公開質問状を送った。
 精神障害者に認められていない鉄道運賃割引、働いている精神障害者に障害基礎年金の不支給決定が増えている問題など6項目を尋ねた。団体世話人の山本悦夫さん(59)=長野市=は「福祉医療制度で、身体障害、知的障害に比べ、精神障害者への対応が非常に遅れている」と指摘。3人の政策が分からないこともあり、初めて取り組んだ。
 山本さんは「新しい知事が精神保健福祉にどんな方針で臨むかは重要で、知事を選ぶにはしっかりと関心を持ちたいと考えた」と説明する。
 塩尻市を中心に高齢の聴覚障害者向けのミニデイサービスをしているボランティアグループ「れんげ草」は告示前の16日、立候補予定者を招いた。これも初めての試みだ。
 同グループによると、高齢の聴覚障害者は若いころに教育機会が限られ、活字で候補者の考えを知ることが難しい人もいる。総務省の規定で知事選の政見放送では手話通訳を付けることも認められていないため、スタッフ代表の武居みささん(48)は「聴覚障害者の声を届け、立候補予定者の生の声を聞く貴重な機会になった」と話す。
 告示前にはほかに、教育問題を考える市民団体が長野市や松本市で立候補予定者をそれぞれ招いたり、子どもの権利について公開質問状を出して回答を発表したりする団体も。生活クラブ生協組合員らでつくる政治団体「信州・生活者ネットワーク」(岡谷市)は遺伝子組み換え作物への考えや森林税活用などを尋ね、ホームページに掲載した。
 今後は、日本青年会議所長野ブロック協議会を母体とする「信州(ふるさと)の未来(あす)を考える会」が28日に駒ケ根市、30日には松本市で企画・運営する合同個人演説会を予定。同協議会の熊谷弘会長は「討論会や演説会を重ねることで、政策が県民との約束になり、候補者の中で政策が具体的に固まっていくことにもつながる」と話している。
<3陣営 民意探り浸透図る機会>
 有権者側から候補者にアプローチする動きが活発なのは、新人3氏の政策や人柄が浸透していないことが大きいようだ。信濃毎日新聞が24日まとめた世論調査でも、投票の際に重視するのは「政策」が33・2%とトップの一方、3候補の政策内容を「知らない」(「まったく」「あまり」の合計)も48・6%に上った。
 こうした情勢で、各候補陣営も県民からの問い掛けに耳を傾けて民意を探り、支持拡大につなげたいとの心理をのぞかせる。ボランティアグループ「れんげ草」が告示前に立候補予定者を招いたのも、メンバーの一人が県内の聴覚障害者団体役員として各陣営に情報提供に配慮するよう求めた際、ある陣営から「呼んでくれれば話しに行く」と言われたのがきっかけだった。
 別の陣営は質問状などが相次ぐことに「候補者本人がすべて目を通すため、かなりの労力」としながらも「1票を大切にするために睡眠時間を削ってでも対応したい」。ほかの陣営は「有権者が何を望んでいるか分かる質問も多く、こちら側も政策のヒントになることもある」とする。
 県民側からの活発なアプローチに対し、候補者も前向きな姿勢を示す。
 阿部氏は「当事者がどういうことに困っているのか、当事者でないと分からないことも多い。政策を訴える機会だが、自分が聞かせてもらう場にもなる」と言う。
 松本氏も「現場に出向いて当事者の声を聞くことが大切だと感じた。政策を充実させる機会として、市民側からの問い掛けには丁寧に対応していきたい」としている。
 腰原氏は「それだけ県民に切実な声があるということだろう。立候補表明から時間がなく不十分な面があるかもしれないが、できるだけ誠実な回答をしてきた」と話す。

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