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県勢・決戦のロンドンへ(3)=競歩・藤沢勇 勝負強く、攻める初舞台

2012年06月29日掲載

五輪代表選考会の日本選手権20キロ競歩で初優勝した藤沢勇=2月、神戸市

 陸上競技の中で地味な競歩への期待が高まっている。日本陸連は「日本人が世界で戦える種目」として、ロンドン五輪代表に競歩だけで9人を選び、男女計3種目にフルエントリーした。男子20キロ競歩に出場する藤沢勇も期待の懸かる一人。ことし2月の日本選手権で初優勝した24歳が、初の舞台でどんなレースをするか楽しみだ。

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 五輪代表の最終選考会となった3月の全日本競歩能美大会(石川県能美市)から、代表発表まで3カ月間の空白があった。代表入りに一抹の不安を抱えながらも、藤沢は「やれることをしっかりやっておこう」と、五輪本番に向けた準備を着々と進めていった。

 大学時代から指導を受ける2000年シドニー五輪代表の柳沢哲(さとし)コーチ(中野実高―山梨学院大出)を頼り、4月はオーストラリアへ。柳沢コーチは日本オリンピック委員会(JOC)が派遣するコーチ留学で首都キャンベラに滞在しており、コーチが帯同するオーストラリアチームで1カ月間練習した。

 15キロの上り坂でペースを上げて追い込む練習を週1回、30キロを週2回行うなど、基礎体力と筋力のベースアップに力を入れた。同チームには北京五輪20キロで銅、50キロで銀メダルを獲得した選手がおり、世界トップレベルの練習を肌で感じる貴重な機会となった。

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 いったん帰国した後、今度は5月12日にロシアで行われたワールドカップ(W杯)に出場。各国の五輪代表も出場した大会に「自分の力がどの程度通用するか、現時点の力を試す」と臨み、1時間22分5秒で日本人トップの16位だった。

 「5~10キロのペースが19分44秒に上がり、後半にそのダメージが出た。ラスト5キロをもう30秒上げたかった」。物足りなさを口にする一方で、収穫もあった。記録は海外のレースでは自己ベスト。09年世界選手権、10年広州アジア大会で力を発揮できなかった苦い経験と比べ、「自分の調整能力が上がってきた」。

 5月25日から再びオーストラリアへ。今度はスピードを強化するインターバル練習も入れて質を上げた。その合宿中、五輪代表決定の吉報が届いた。今月21日にはオーストラリアからスイスへ移動。標高約1800メートルのサンモリッツを拠点に最後の追い込み練習に入った。

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 昨年は日本選手権前に体調を崩して8月の世界選手権出場を逃した。その悔しさをバネに勝負強い選手へと成長。9月に10キロ競歩で日本新をマークし、さらにトラックの1万メートル競歩は国内2連勝。20キロ競歩では全日本高畠大会(山形県高畠町)を制し、年が明けて代表選考会の日本選手権と全日本能美大会で連勝した。

 練習で常に意識するのは後半のスピードアップだ。「五輪はペースの上げ下げが激しくなる。冷静に自分のリズムを守りながら攻めるところは攻め、ラスト5キロを一番いいラップで上がるのが理想」と本番でのレースのイメージを描く。

 小学5年だった1998年の長野冬季五輪で、日本選手が次々とメダルを獲得。そのシーンが忘れられず、五輪への憧れを抱くようになった。フリースタイルスキー女子モーグルで金メダルを獲得した里谷多英をまね、階段からジャンプして「コザック」のポーズを取るのがクラス内ではやったという。

 「あの時は、五輪のメダルは簡単に取れるんだなと思った。自分が五輪を本気で目指すようになり、出るだけでもこんなに大変だとは思わなかった」。14年前、胸に刻まれた長野五輪の感動の瞬間に、自分がどこまで近づけるか。


<競歩五輪代表、信州から5人目>

 長野県は競歩でトップレベルの選手を数多く輩出しており、五輪に出場する県出身選手は藤沢が5人目となる。

 先陣を切ったのは1988年ソウル五輪の20キロ競歩で26位になった酒井浩文(下伊那郡豊丘村出身)。抜群のスピードを誇り、全盛期にはトラックの5000メートルや1万メートルを中心に日本新を連発した。世界選手権に2度出場し、90年アジア大会は銀メダルを獲得した。

 92年バルセロナ五輪では園原健弘(下伊那郡阿智村出身)が50キロ競歩で22位。後に日本陸連の競歩部長を務めた。2000年シドニー五輪は20キロ競歩で柳沢哲(中野市出身)が22位、50キロ競歩出場の小池昭彦(長野市出身)は失格だった。

 柳沢は01年世界選手権の20キロ競歩で7位になり、五輪、世界選手権を通じて同種目で日本人初の入賞を果たした。00年にマークした20キロ競歩の日本記録1時間19分29秒は今も破られていない。

 現在、藤沢のコーチを務める柳沢氏は「ロンドン五輪では1時間20分0秒が入賞の一つの基準になる」と見る。平均すれば1キロ4分のペースだ。「スピード、スタミナとも全体的にバランス良く上がってきた。日本記録を更新できるだけの力をつけている」と藤沢に期待を寄せる。


【藤沢 勇(ふじさわ・いさむ)】中野実高(現中野立志館高)では全国高校総体5000メートル競歩で4位。山梨学院大4年の2009年に1万メートル競歩で当時の日本新をマークした。20キロ競歩は同年夏のユニバーシアード大会で6位、世界選手権で30位、10年アジア大会で4位。自己ベストは2年前に出した1時間20分12秒。ALSOK。164センチ、56キロ。24歳。中野市出身。

【競歩】常にどちらかの足が地面に接していなければならず、両足が浮くと「ロス・オブ・コンタクト」の違反になる。さらに前脚は接地の瞬間から体の真下の位置にくるまで、まっすぐに伸びていなければならない。膝が曲がっていると「ベント・ニー」の違反。この2点について審判から注意された時、すぐに直さないと警告カードが出され、3回の警告で失格となる。

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