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2014 長野県知事選

焦点=野口・阿部の2氏名乗り 一騎打ち念頭、態勢固め

2014年05月29日(木)


記者会見で出馬の動機などについて説明する野口氏(中央)=28日、長野市内


子育て支援をテーマにしたタウンミーティングに出席した阿部氏=28日、都内

 7月24日の知事選告示まで2カ月を切った28日、新人で信州大名誉教授の野口俊邦氏(71)が、再選を目指す現職の阿部守一氏(53)の対立候補として名乗りを上げた。野口氏は、自民、民主、日本維新の会、公明、社民の各党が現職支援を打ち出したことを「『オール与党』のなれ合い」と批判。阿部氏は、多くの政党・団体による支援を歓迎しつつ、組織選挙の色合いを薄めて県民と対話する姿勢を前面に出したい考えだ。第三の候補擁立を目指す動きはあるが現時点で具体化のめどはなく、両陣営とも現新一騎打ちを念頭に選挙態勢づくりを急ぐ。


<野口氏陣営 批判票掘り起こしに力>


 「阿部県政の問題点をどう変えるか、政策を県内隅々まで伝えれば(情勢が)がらっと変わる可能性はある」。共産党県委員会や県労連などでつくる「明るい県政をつくる県民の会」の要請に応じて出馬を決めた野口氏は、28日の記者会見で、阿部氏の政治手法や姿勢に対する批判票の掘り起こしに力を入れていく考えを強調した。


 知事選で県民の会が候補を擁立するのは、中野早苗氏が出馬した2000年以来だ。02年は知事不信任決議を受けて失職、再出馬した田中康夫氏を支援。06年は自主投票とし、構成団体の共産党県委が最終盤で3選を目指した田中氏を支援した。前回知事選も安曇野ちひろ美術館常任顧問の松本猛氏を支えるなど、近年は会が擁立に関わっていない候補に乗る形で無党派層と連携する戦略を採ってきた。


 ただ、今回は阿部氏が世論調査で支持率8割台を維持していることもあり、対抗馬に名乗りを上げる動きがほとんどなかった。このため独自候補擁立に動き、今春には松本氏に出馬の意向を確認。前向きな答えは得られなかった。


 その後、「現県政の課題を論戦で明らかにでき、会以外の広がりも持つ人物」を念頭に模索。田中県政が中止を決めた県営浅川ダム(長野市)を事業継続した阿部氏に批判的な野口氏が浮上、5月13日に出馬を打診していた。


 野口氏は、10年伊那市長選、11年県議選伊那市区で、地元の共産党地区委員会関係者らの支援を受けたが落選。県民の会代表委員の細尾俊彦県労連議長は「政策を訴えていく上で、選挙の経験が重要だと考えた」とする。


 今後は工事が進む浅川ダム問題を再度取り上げて争点化を図るほか、原発再稼働や環太平洋連携協定(TPP)、特定秘密保護法などの国政課題に、阿部氏が「明確に反対していない」として政治姿勢を問う方針。県民の会の幹部は「前回選で民主党や社民党の支援を受けて当選した阿部氏が、自民党の推薦も得たことに不満な人も相当数いるはずだ。そうした有権者の受け皿にもなりたい」と述べた。


<阿部氏陣営 県民との協働を前面に>


 「どんな候補が出ようと、私がこれまで取り組んできたこと、取り組んでいこうとすることを県民にしっかり伝え、理解を得ていきたい」。現職の阿部氏は28日、新人の野口氏が正式に立候補を表明したことについて、出張中の都内で取材にそう答えた。


 阿部氏は「幅広く支援いただくのはありがたい」としており、9日の出馬表明後、政党だけでなく県内の業界団体などから推薦や支持表明が相次いでいる。21日に県中小企業団体中央会の政治団体「県中小企業団体政治連盟」(星沢哲也会長)が支持を確認。県建設業協会も26日に開いた通常総会の席上、蔵谷伸一会長が推薦する考えを示し、賛同を得た。


 両団体は2010年の前回選で、阿部氏の対立候補だった腰原愛正元副知事を推薦するなどして支援した。28日には県商工会連合会の政治団体「県商工政治連盟」(矢崎昭和会長)も阿部氏を推薦することを決定。腰原氏支援に回った複数の団体が、今知事選では早々と阿部氏支援に回っている。


 支援の理由について、各団体からは阿部氏の経済政策など評価する声がある。前回知事選で経済団体幹部らが集まり腰原氏擁立の母体となった「信濃会」の会長を務めた星沢氏も、中小企業振興策についての基本理念などを定めた県中小企業振興条例の制定に触れ「われわれと方向性は一致している」と話す。県建設業協会も「公共事業予算を維持している」とする。


 阿部氏周辺によると、阿部氏本人は政党や団体からの相次ぐ支援表明を歓迎する一方で、有権者に政党や団体の影響力が強い候補と見られることを懸念。これから本格的に着手する公約づくりも「骨子を示した上で、県民とのキャッチボールを通じてつくっていきたい」と述べ、対話集会を開いて「県民との協働による政策づくり」を前面に打ち出していく構えだ。


 支援表明した複数の政党や団体、後援会などが機能的に動ける仕組みも不可欠とし、選挙戦を支える新たな態勢づくりも進めている。